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タイトル: 木質バイオマスのエネルギー利用による都市近郊の里山再生に関する研究
その他のタイトル: Studies on the Restoration of Peri-Urban Satoyama Woodlands through the Utilization of Renewable Energy from Woody Biomass
著者: 寺田, 徹
著者(別言語): Terada, Toru
発行日: 2011年3月24日
抄録: 本論文は, 管理放棄により荒廃が進む都市近郊の里山を対象として, その管理再生の在りようを, 木質バイオマスのエネルギー利用の観点から論じたものである. 本論文は全7章から構成される. 第1章では, 社会背景の整理から, 都市近郊里山の管理放棄の問題に対して, 木質バイオマスのエネルギー利用による管理インセンティブの付与に関して検討する必要性を指摘した. さらに, 既往研究のレビューから, 人の管理に基づく都市近郊里山のバイオマス発生量の評価, バイオマスのエネルギー利用面からの評価, バイオマス利用に関する実現可能性の評価の3点が不足していることを指摘した. そして, 本論文の目的として「里山管理に伴うバイオマス発生量の解明」, 「発生したバイオマスをエネルギー利用した場合の効果の解明」, 「里山のバイオマス利用のコスト面からの評価とその低減策の検討」の3点を設定し, それらの検討を通じて, 木質バイオマスのエネルギー利用を通じた都市近郊里山の管理再生についての計画的基礎を提示することを, 本研究の目的として掲げた. 第2章「里山管理に伴う木質バイオマス発生量の推定」は, 本研究の第1の目的に対応している. ここでは, 発生量を推定するにあたり, まず, 里山のバイオマス現存量を, 現地調査, 林業センサス, 収穫表, および相対成長推定式を用いて明らかにし, 次いで, 複数の里山管理シナリオを設定し, それらのシナリオを実行した際のバイオマス発生量について, 林分成長シミュレーションによる推定を行った. その結果, 研究対象地における対象樹種の現存量は, クヌギ・コナラ林において139dt/ha, スギ林において164dt/haと推定され, 概ね既往研究の値と整合した. 次いで, 得られた値をシミュレーションモデルの初期値として入力し, 60年間の林分成長シミュレーションにより, 里山管理時のバイオマス発生量を明らかにした. 管理シナリオは, 多様な環境保全機能の発現を意図して, 「景観保全」, 「休息レクリエーション」, 「運動レクリエーション」, 「ランドスケープ多様性」の4パターンを設定した. それぞれのシナリオにおけるバイオマス発生量は, 研究対象地全体で2,380~19,910dt/yとなり, 人為の強さとバイオマス発生量が比例する関係が確認された. バイオマス発生量が最大の管理シナリオは, 立木の皆伐を伴うランドスケープ多様性型の管理であり, 低林状態で森林を維持する際のバイオマス生産量の多さが確認された. 第3章「里山由来バイオマスによるエネルギー供給可能量・CO2削減効果の推定」は, 本研究における第2の目的に対応し, 第2章で得られた発生量の値を, バイオマス発電による電力供給, CO2削減効果の2点から評価することにより, エネルギー利用時の効果を解明した. まず, エネルギー学分野の推定式や係数を用いて電力供給可能量の推定を行った結果, 里山管理によって発生する2,380~19,910dt/haのバイオマスは, ガス化発電プラントにおける発電を考える場合, 3.7~39百万kWhの電力へ変換可能であり, その際の電力供給可能世帯数は, 830~8,800世帯となった. この値は対象地の全世帯に対して0.08~0.82%であり, エネルギー自給という観点からは限定的な値であった. しかし, バイオマスエネルギーの導入目標値に対しては8.5~90%となり, とくにランドスケープ多様性型の管理において高いポテンシャルが確認された. 次いでCO2削減効果からの評価を行った. バイオマス利用によるCO2排出量の削減と, CO2吸収固定量とのあいだにはトレード・オフの関係がみられたが, その収支で評価した際の削減可能量は, 管理シナリオごとに10,363~21,048t-CO2となり, ランドスケープ多様性型の管理シナリオが, 最もCO2を削減しうるシナリオとして評価された. また, その際のCO2削減目標値に対する達成率は58~119%となり, ランドスケープ多様性型の管理においては削減目標を達成可能であった. 同シナリオは, 古くから行われていた農用林, 薪炭林維持のための管理に類するものであり, 歴史的な管理形態が, 現代的なCO2削減という命題からも高く評価される結果となった. 第4章および第5章では, 本研究における第3の研究目的である, 「里山のバイオマス利用のコスト面からの評価とその低減策の検討」に対応する解析を行った. 第4章「里山のバイオマス利用に伴う収穫・輸送コストの推定」においては, まず, バイオマスの収穫・輸送コストに関する, 山間部の森林と都市近郊の里山との相対的な比較を行った. 下総台地の里山(平地林)と秩父地域の森林を対象に, 既往の推定式とGISを用いた解析により推定を行った結果, 単位重量あたりの収穫・輸送コストは, 下総台地の里山のほうが15%(約1,600円/dt)ほど優位であった. 次いで, 研究対象地の里山に対してランドスケープ多様性型の管理シナリオの適用を想定し, 同様の方法でバイオマスの収穫・輸送コストの推定を行った結果, コストの総和は17.6百万円となり, 単位重量あたりの平均コストは9,716円/dtとなった. この値をもとに, バイオマスプラントの運営に関係するランニングコストを推定し, 単位発電量あたりのコストを推定したところ, 11.1円/kWhとなった. 現行RPS法にもとづく取引価格(7.5~8.7円/kWh)との比較から, 里山のバイオマス利用の経済的な成立は困難であると判断され, コストの削減や追加的な収入を得る為の検討が不可欠だと結論づけられた. 第5章「木質バイオマスの複合利用によるコスト低減効果の推定」においては, 里山のバイオマス利用の実現可能性を高めるために, 総合的・複合的なバイオマスの利用システムのもとに里山のバイオマス利用を位置付けるという構想を提案し, 同システムによるバイオマス収集可能量, エネルギー供給可能量, CO2削減効果, およびシステムの経済性に関する実証的な検討を行った. その結果, まず, 複合利用による木質バイオマス収集可能量は35,840dt/yrとなり, その際の電力供給可能量は74.0百万kWhとなった. この値は16,800世帯(研究対象地の1.55%)の電力需要を満たすものであり, バイオマスエネルギーの導入目標値に対する割合は172%であった. 次に, CO2削減効果は51,600t-CO2/yrと推定され, 削減目標に対して291%の達成率となり, CO2削減策のひとつとしてポテンシャルが高いことが示された. 最後に, 事業性に対する試算を行った結果, RPS法に基づく電力取引価格を下回るコスト(5.28円/kWh)で発電が可能となり, 里山のバイオマス利用の事業的な実現可能性が示唆された. 以上の第4章, 第5章における検討により, 木質バイオマスのエネルギー利用による里山の管理再生の実現可能性を高めるにあたり, 木質バイオマスの複合利用が有効であることが示唆された. 木質バイオマスの複合利用は, 里山のみならず, 公園緑地や街路樹, 公共施設内の緑地や民有緑地といった様々な緑地の管理促進にもつながると考えられ, 地域に分布する緑地全体の質の向上にも資する可能性をもつものである. 里山を同システムへ位置付けるためには, 上記で検討を行った経済的な視点に加え, このような環境保全上の多様なメリットを踏まえた上での複眼的, 戦略的視点が必要となってくると考えられた. 最後に, 第6章「計画の実現に向けた社会システムの検討」においては, 前章までの検討内容の社会実装に向けた課題を検討するものとして, 木質バイオマスのエネルギー利用による都市近郊里山の管理再生を実現するための具体的な社会システムを, 「里山管理システム」「プラント運営システム」「エネルギー利用システム」の3つのサブシステムの総体として提示した. これらの検討により, 第1章で述べた3つの研究課題を通じて基礎的な知見が得られたものと考えられ, さらに, 第6章において里山の管理再生に向けた社会システムのあり方を提示したことにより, 本研究の目的である, 木質バイオマスのエネルギー利用による都市近郊里山の管理再生に関する計画的基礎の提示がなされたものと考えられた. なお本研究が対象とした, 木質バイオマスのエネルギー利用の観点からの里山再生についての計画的検討は, 未だ緒についたばかりであり, 本研究においては最も基礎的な課題の検討を, ケーススダティを通じて行うに留まった. 従って今後の研究に向けた中心的な課題は, 本研究で使用した評価の枠組みのブラッシュアップ, および適用範囲の同定と値の一般性の獲得に向けたケーススタディの積み重ねにあると考えられた.
Woodlands near human settlements often have long histories of providing people with fuelwood and other organic materials. In Japan, these woodlands are called satoyama. While satoyama woodlands were historically coppiced to provide an essential source of fuelwood, many have been developed into residential areas, particularly in peri-urban areas, as a result of the introduction of fossil fuels beginning in the 1960's. Remaining satoyama woodlands were simply abandoned due to the loss of economic value. Abandonment reduced the multifunctional values of satoyama woodlands such as scenic beauty, recreational potential, bio-diversity. In response to abandonment, thousands of volunteer groups have formed since the 1990's to restore satoyama woodlands. However, in spite of the importance of grassroots volunteers, their actual activities are limited in spatial extent due to shortages of labor power, time, and management skill. This suggests that more substantial incentives are necessary, if management of satoyama woodlands is to be extended. Using woody biomass from satoyama woodlands as a carbon-lean renewable energy resource is an important incentive for restoring management. In recent years, the use of woody biomass has become increasingly common in accordance with increased interest in mitigating global climate change. Japan faces difficult CO2 reduction targets under the Kyoto Protocol, which calls for 6% emission reductions of 1990 emissions by 2012. To accomplish this goal, high-efficiency wood-burning plants have been developed in many cities (e.g. Ichihara, Chiba; Hitachinaka, Ibaraki; Murayama, Yamagata). The recent rapid investment in woodfuel utilization in cities might offer a new role for satoyama woodlands in peri-urban areas as a nearby source of woody biomass to meet urban heat and electricity demands.
内容記述: 報告番号: 甲27248 ; 学位授与年月日: 2011-03-24 ; 学位の種別: 課程博士 ; 学位の種類: 博士(環境学) ; 学位記番号: 博創域第695号 ; 研究科・専攻: 新領域創成科学研究科環境学研究系自然環境学専攻
URI: http://hdl.handle.net/2261/50472
出現カテゴリ:021 博士論文
1223220 博士論文(環境学研究系自然環境学専攻)

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