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タイトル: 海洋生物に由来する細菌の系統分類学的研究
著者: 倉橋, みどり
著者(別言語): クラハシ, ミドリ
発行日: 2002年3月29日
抄録: ● 目的// 近年、生物の種多様性に関する研究は、多方面から積極的に取り組まれている。環境中のDNA断片を分析したり、蛍光プロープを用いるなど、培養によらない解析手法の発展にともない、その多様性が次々に明らかにされている。本研究では、未知領域の細菌を分離し、培養することを目的とする。分離、培養に重点を置いた主な理由は、遺伝子資源の確保にある。// 現在、細菌の分離、培養は、大きく2つの方向からアプローチされている。ひとつは、生きているが培養困難な状態にある微生物を詳細に研究する事によって、VBNC (Viable but nonculturable)状態からculturableな状態へ転換させる方法を開発しようとするものである。もう一つは、微生物の発見以来、多くの熱心な研究者たちよって膨大な数の細菌が記載されてきているが、人類がこれまで容易に接近することのできなかった極限環境などから、新規性の高い細菌を探索していく方向である。しかし身近な環境は、本当に探索しつくしたのだろうか。そこで本研究では、身近な海洋生物の内臓を新規バクテリア探索のフロンティアと位置付け、その多様性を明らかにした。//● 方法// 1998年から2000年の間に、東京都、千葉県、神奈川県、静岡県において、磯採集とスキューバダイビングにより、分離源海洋生物として主に軟体動物をサンプリングした。取り出した内臓をホモジネートし、滅菌生理食塩水で希釈し菌液を得た。Marine培地上、塗沫法にて、23℃で数日間培養し、コロニーを単離し、純粋培養化した。各菌株よりDNAを抽出し、16S rDNAの後半約500bpの部分塩基配列を決定し、相同性検索を行った。その結果、既知種との相同性が95%以下の株を選出し、16S rDNAの全塩基配列を決定した。その配列データを基に、多重アライメント計算を行い、NJ法による系統樹を作成した。各株の新規性を明らかにするために、生理・生化学試験と化学分析を行った。生理・生化学試験は、菌液を調製した後、基質分解能や発育試験、糖類の資化性能を観察した。化学分析については、DNA塩基組成、菌体脂肪酸組成、呼吸鎖キノン分子種の分析を行った。また、必要のある株については、DNA-DNAハイブリダイゼーション検定も行った。//● 結果// 21種類の海洋生物から、116株の細菌を分離した。分離した細菌の16S rDNAの後半約500bpの部分塩基配列による相同性検索に基づいて同定した結果、Proteobacteria 74株、Cytophaga-Flavobacterium-Bacteroides group 12株、Bacillus/Clostridium group 2株、Actinobacteri 2株であり、1株は酵母のSaccharomycotinaであった。16S rDNAの既知種との塩基配列相同性が95%以下であったのは、116株の分離株のうち17株であった。16S rDNAの塩基配列を基に、NJ法によって作成した系統樹では、分離された17株は、Alteromonas group(8株),Rhodobacter group(4株),Cytophaga-Flavobacterium-Bacteroides group(5株)の3つの細菌グループにわけられた。// MKT92:Thalassononasとの16S rDNAの相同性は、94%であり、Thalassononas属、Colwellia属とクラスターを形成した。MKT92に対して新属を提唱する。// MKT82,86,87,89,106,112:この6株は、異なる種または同種の別個体の海洋生物から分離されたにもかかわらず、互いに非常に高い相同性を示した。この6株と、Thalassononas属,Glaciecola属,Alteromomnas属,Pseudoalteromonas属との16S rDNAの相同性は、89〜91%であった。またこの6株で明らかに単系統群を形成した。MKT82,86,87,89,106,112に対して新属を提唱する。// MKT110:16S rDNAの相同性は、Pseudomonas andersoniiと90%, Marinobacter属と89%であり、系統樹上でも、Pseudomonas属、Marinobacter属とクラスターを形成した。MKT110に対して新属を提唱する。// MKT107:16S rDNAの相同性は、[Ruegeria] gelatinovorans, Sulfitobacter mediterraneu, Sulfitobacter pontiacusのいずれとも94%であった。系統樹上では、Antarctobacter属、Sagittula属とクラスターを形成した。MKT107に対して新属を提唱する。// MKT95:16S rDNAの相同性は、[Roseobacter] gallaecienisと[Ruegeria] atlanticaのいずれとも96%であったが、系統樹上では、[Roseobacter] gallaecienisと[Ruegeria] algicolaとクラスター形成した。[Roseobacter] gallaecienisと[Ruegeria] algicolaは誤分類と考えられるので、MKT95とまとめて新属を提唱する。// MKT84,94:この2株は、異なる種の海洋生物から分離されたにもかかわらず、2株間の16S rDNAの相同性は100%であった。近縁属との16S rDNAの相同性は、[Stappia] stellulatumと[Roseibium] denhamenseのいずれとも94%であった。MKT89,94に対して新属を提唱する。// MKT38:Gelidibacter algensとの16S rDNAの相同性は、90%であった。一方、系統樹上では、Zobellia属、[Cytophaga]属とクラスターを形成した。MKT38に対して新属を提唱する。// MKT93:16S rDNAの相同性は、Polaribacter属、Tenacibaculum属いずれとも94%であり、Polaribacter属、Tenacibaculum属とクラスターを形成し。MKT93に対して新属を提唱する。// MKT44 : [Cytophaga] fermentansとの16S rDNAの相同性は、96%であり、系統樹上でも[Cytophaga] fermentansとクラスターを形成した。[Cytophaga] fermentansは誤分類と考えられるので、MKT44とまとめて新属を提唱する。// MKT111:Flammeovirga apricaとの16S rDNAの相同性は、92%であり、系統樹上でもFlammeovirga apricaとクラスターを形成した。MKT111に対して新属を提唱する。// MKT109:Persicobacter diffluensとの16S rDNAの相同性は、91%であり、系統樹上でもPersicobacter diffluensとクラスターを形成した。MKT109に対して新属を提唱する。//●まとめ// 身近な海洋生物の内臓から、当初の予想を遥かに超える高率で新規性の高い株が分離され、このフィールドにおけるバクテリアの種多様性に関する分類学上の新たな知見が得られた。
内容記述: 報告番号: 甲17204 ; 学位授与年月日: 2002-03-29 ; 学位の種別: 課程博士 ; 学位の種類: 博士(農学) ; 学位記番号: 博農第2400号 ; 研究科・専攻: 農学生命科学研究科応用生命工学専攻
URI: http://hdl.handle.net/2261/51148
出現カテゴリ:021 博士論文
1160620 博士論文(応用生命工学専攻)

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