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タイトル: Studies on Roles of Interleukin-1, Interleukin-17 and Tumor Necrosis Factorα in T Cell-Mediated Immune Responses
その他のタイトル: 免疫応答の調節機構における炎症性サイトカインの役割 : 遺伝子欠損マウスを用いた解析
著者: Nakae, Susumu
著者(別言語): 中江, 進
発行日: 2002年3月29日
抄録: 炎症反応は細菌などの感染源の除去や外傷による損傷組織の修復に必要であり、免疫系の活性化を伴う生体が持つ防御機構の一つである。炎症誘発物質の一つであるサイトカイン、中でもinterleukin-1(IL-1)やtumor necrosis factor α(TNFα)は炎症の誘導過程で様々な作用を示し、炎症性サイトカインと呼ばれている。// IL-1やTNFαは急性炎症時における発熱誘導因子という位置付けだけでなく、免疫細胞の活性化にも大きく関与することが知られている。IL-1欠損マウスやTNFα欠損マウスの作製が1990年代に相次いで報告され、細菌感染に対する抵抗性などの急性炎症応答におけるそれらサイトカインの役割が明らかにされたが、慢性炎症応答に見られるような炎症に伴う免疫応答の活性化の分子機構については未解な部分が多い。IL-1には異なる遺伝子からなるIL-1αとIL-1βが存在し、また、IL-1とTNFαは互いに重複した作用を持つ。炎症及び免疫応答におけるIL-1α、IL-1βそしてTNFαの個々の機能についてもさることながらこれら3つの分子の役割の違いについてはそれぞれの遺伝子欠損マウスから得られた知見だけでは十分な理解が得られていないのが現状である。また、近年、IL-1やTNFαと類似の作用を有するサイトカインIL-17の登場で、それらサイトカインによる炎症及び免疫応答の惹起の分子機構がより複雑になってきている。// そこで本研究では、免疫応答の調節機構における個々の炎症性サイトカインの役割とそれらサイトカインの協調的作用によって誘導されると期待される免疫応答の活性化を伴う炎症応答の分子機構を理解するために、1)炎症性サイトカインIL-1による免疫担当細胞の活性化の分子機構について、2)炎症性免疫応答におけるIL-1とTNFαの役割について、IL-1α、IL-1β、IL-1α/β、IL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1Ra)、TNFα及びIL-1α/βxTNFα欠損マウスを利用して明らかにした。また、3)IL-17欠損マウスの新規作製及び免疫応答におけるIL-17の役割について評価を行った。これら欠損マウスを用いた種々の解析結果からIL-1α、IL-1β、TNFα及びIL-17によって繰り広げられる外来抗原に対する生体防御の分子機構について考察を行った。//1)IL-1による抗原特異的なT細胞及びB細胞の活性化の分子機構について//IL-1は古くからリンパ球活性化因子として知られ、T細胞のマイトジェン刺激に対する増殖応答を増強したり、in vivo投与により外来抗原に対するB細胞の抗体産生を増強する作用があることが知られている。しかしながら、その分子機構についてはまったく明確になっていない。IL-1α/β欠損マウスは外来抗原に対する抗体産生の障害を認めるが、IL-1の欠損はB細胞のマイトジェンに対する抗体産生能や増殖応答、T細胞のマイトジェンに対する増殖応答やサイトカイン産生能、抗原提示細胞の貪食能、抗原プロセシングや提示能といった個々の免疫担当細胞の基本的な機能には影響を及さなかった。すなわち、IL-1α/β欠損マウスでの抗体産生能の低下はそれら個々の免疫担当細胞の単独の機能に起因するものではないことが示唆された。一方、抗原提示細胞とT細胞、T細胞とB細胞との細胞間相互作用を介した抗原特異的なT細胞及びB細胞の機能がIL-1α/β欠損マウスでは障害されていることが明らかになった。抗原提示細胞の抗原/MHCII複合体とT細胞上のT細胞レセプターの相互作用によりT細胞上にIL-1レセプター(IL-1R)の発現が誘導され、また、抗原提示細胞から産生されたIL-1がT細胞上のIL-1Rを介してCD80/CD86-CD28シグナルとは非依存的に抗原特異的なT細胞の活性化を誘導し、そのT細胞上にCD40リガンド(CD40L, CD154)やOX40(CD134)の発現を誘導することにより、引き続きB細胞上のCD40を介して抗原特異的なB細胞の抗体産生応答を増強する分子機構が初めて明らかになった。//2)接触型過敏症応答におけるIL-1α、IL-1β及びTNFαの役割の違いについて// アクセサリーによる金属アレルギーや漆による皮膚のかぶれなどに代表される接触型過敏症応答(CHS)はT細胞によって引き起こされる皮膚を介した炎症性の免疫応答の一つである。1990年代初頭の解析では、CHSの初期応答において、ランゲルハンス細胞(LC)がIL-1βを、ケラチノサイト(KC)がIL-1αとTNFαを産生することが知られており、また、それらの中和抗体投与の解析からCHSの発症にそれらサイトカインの関与が示唆されていた。事実、TNFR欠損マウスではoxazoloneによるCHSは抑制されることが示された。一方、IL-1β欠損マウスではoxazoloneと高濃度の2, 4, 6-トリニトロクロロベンゼン(TNCB)によるCHSは正常に誘導されるが、低濃度のTNCBでのみ抑制されることが報告された。これら欠損マウスの結果からもTNFαとIL-1βがCHSの発症に何らかの役割を演じていることは明白であるが、IL-1αの役割や類似の作用を示すそれら3つのサイトカインの特異的あるいは相補的な作用の明確な区分については全く理解されていない。// 高濃度TNCB感作によるCHSの発症は、IL-1β欠損マウスではすでに報告があるように野生型マウスと同レベルの誘導が見られるのに対し、IL-1α欠損マウスとIL-1α/β欠損マウスは同程度の抑制を認めた。CHSの発症において、皮膚から従属リンパ節へ移動した成熟LCがIL-1αを産生し、そのIL-1αがハプテン特異的なT細胞の活性化に必要であることが明らかになった。一方、IL-1βはハプテン特異的なT細胞の活性化よりもむしろハプテン特異的な抗体産生応答の促進に深く関わり、CHSで惹起される免疫応答においてIL-1αとIL-1βの作用に大きな特異性があることが明らかになった。また、TNFα欠損マウスもIL-1α/β欠損マウスと同程度のCHSの発症の抑制を認めた。しかしながら、TNFα欠損マウスはIL-1α/β欠損マウスと異なり、ハプテン特異的なT細胞の活性化は正常に誘導され、IL-1の作用とは異なるTNFαによるCHS誘導の分子機構が存在することが示唆された。IL-1はアレルゲン感作時のハプテン特異的なT細胞の活性化だけでなく、再感作時の皮膚局所でのTNFαの産生に必要で、局所で産生されたTNFαは炎症性免疫担当細胞の局所への浸潤に関わる接着分子やケモカインの誘導に大きく寄与していることが明らかになった。中でも、TNFαは皮膚の細胞に直接的に作用して活性化T細胞の浸潤に重要な役割をもつInterferon-γ(IFN-γ)-inducible protein 10 kDa (IP-10)の発現をIFN-γの作用とは非依存的に亢進させることにより、CHSにおける慢性炎症応答の誘導に関わることが明らかになった。//3)IL-17欠損マウスの作製とT細胞依存性免疫応答におけるIL-17の役割// IL-17は1993年にcytotoxic T lymphocyte associated antigen-8としてT細胞のサブトラクションcDNAライブラリーからクローニングされ、Herpesvirus saimiriのopen reading frame 13にコードされるアミノ酸と相同性が高い糖タンパク質である。IL-17は活性化及び記憶CD4陽性T細胞に限局して発現し、T細胞の活性化に関わるリンパ球活性化因子として、また、マクロファージや上皮系及び内皮系細胞に作用してIL-1やTNFαといった炎症性サイトカインの他、ケモカイン、プロスタグランジンや一酸化窒素といった炎症性メディエーターの産生を誘導する炎症性サイトカインとして位置付けられている。In vitro培養系での解析では、IL-17はIL-1やTNFαと良く似た作用を示し、事実、IL-1とIL-17の細胞内シグナルは同一の因子tumor necrosis factor-associated factor 6(TRAF6)によって伝達されることが知られている。また、健常人では認められないが、関節リウマチ患者の滑膜液中や喘息患者の血中にIL-17が高濃度で検出されることが知られており、ヒト慢性疾患の発症との関わりが示唆されているが、生体内でのIL-17の役割については良く分かっていない。そこで、本研究では、IL-17欠損マウスを作製し、IL-17産生細胞であるT細胞に依存した免疫応答における生体内でのIL-17の役割を解析した。IL-17欠損マウスはCHS、遅延型過敏症(DTH)、気道過敏症(AHR)応答といったアレルゲン特異的な免疫応答が低下していることがわかった。IL-17はアレルゲン特異的なT細胞の活性化に必須であるだけでなく、B細胞による抗体産生にも重要な役割をもっていることが初めて明らかになった。一方、移植片対宿主応答(GVHR)に見られるような移植細胞による宿主アロ抗原に対する細胞障害において、移植細胞側のIL-17の欠損はアロ抗原特異的な細胞障害には影響を及さないことが分かった。関節炎、脳脊髄炎、大腸炎や自己免疫性糖尿病といった自己免疫疾患の発症との関わりについては現在調査中である。また、近年、IL-17はIFN-γを産生するTh1細胞やIL-4を産生するTh2細胞といったものでは発現しておらず、特殊なCD4陽性T細胞で産生され、また、TNFαを共発現していることが知られている。種々の免疫応答においてIL-17、TNFα及びIL-1との特異性や相補性を明らかにするために、現在、IL-17xTNFα、IL-1xIL-17及びIL-1xIL-17xTNFα欠損マウスの作製を手掛けており、これらを用いてさらなる解析を進める予定である。
内容記述: 報告番号: 甲17234 ; 学位授与年月日: 2002-03-29 ; 学位の種別: 課程博士 ; 学位の種類: 博士(農学) ; 学位記番号: 博農第2430号 ; 研究科・専攻: 農学生命科学研究科応用動物科学専攻
URI: http://hdl.handle.net/2261/51149
出現カテゴリ:021 博士論文
1162220 博士論文(応用動物科学専攻)

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