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タイトル: 機能的磁気共鳴画像による海馬頭部検出のための解剖学的指標
著者: 浅野, 修一郎
著者(別言語): アサノ, シュウイチロウ
発行日: 2003年3月5日
抄録: 【目的】近年の磁気共鳴画像(MRI)技術の進歩の中で、echo-planar imaging (EPI)を利用した機能的MRI (functional MRI [fMRI])による脳機能検査法により、実際の人間における高次脳機能研究に新たな突破口を開いた。その中で、記憶の研究においては特に海馬の役割の解明が重要な因子とされている。ところが、頭蓋底の脳とは磁化率の異なる副鼻腔や内耳道といった構造物に海馬とその周辺領域が近接しているため、EPI上で画像が十分に描出されず、はなはだしい場合は完全に飛んでしまう場合が散見される。こうような状況を理解しないでfMRIを施行すると、最も必要な情報が落ちてしまう危険がある。そこで、本研究においては下記の事項を目的として研究を遂行した。まず、(1) 健常者においてどの程度の割合でEPI画像上における海馬頭部が十分な描出得られるかを調べた。次に、(2) 海馬頭部が描出される群と描出されない群との間で、頭蓋底の諸構造物との関係で比較的容易に計測可能な指標で統計的有意差のあるものを抽出した。さらには、(3) 上記(2) において抽出された指標から海馬描出性を推定できる方法を求め、今後の海馬の機能研究でのEPI画像の品質に注意を喚起できるようにした。//【方法】本邦の健常人ボランティア31 名(男16名、女15名)のおのおのにおいてEPI画像データと解剖学的指標を検討するためのthree-dimensional magnetization-prepared rapid gradient-echo (MP-RAGE)法によるT1強調画像をSiemens社製MAGNETOM Vision 1.5 Tシステムを用いて撮像した。このときEPIはマトリックス: 128×128 、FOV: 24 cm×24 cm 、厚さ: 8 mm (ギャップなし)、計18スライスの全脳画像を作成した。得られた画像をAFNIソフトウエア(Biophysics Research Institute, Medical College of Wisconsin, Milwaukee, WI)上にて展開し、まず、EPI画像とMP-RAGE 画像を比較することで海馬頭部の描出の有無を検討し、描出群と非描出群にわけた。次に、MP-RAGE画像にて、頭蓋底の解剖学的諸指標データを計測した。本研究においては下記9因子を抽出し、検討した。すなわち、(1) 内耳道垂直径、(2) 内耳道水平径、(3) 内耳道面積、(4) 海馬体部-内耳道間距離、(5) 海馬頭部-中頭蓋窩間距離、(6) 蝶形骨洞含気率、(7) 斜台-前橋部間距離、(8) 後床突起-中脳間距離、(9) 基底角、を求めた。これらの指標と海馬頭部の描出の有無につき統計学的に解析し、有意な因子を決定した。最終的には、有意な因子を利用して海馬頭部の描出性の推定する方法につき統計学的手法を用いて作成した。//【結果】被験者の年齢は21歳から42歳の範囲の集団で、平均28.5歳 (標準偏差6.3歳) であった。年齢と性別間で有意差なく(Mann-Whitney U -検定: p = 0.15)、性別と利き手間でも有意差なく(Fisher's exact test: p = 0.65)、さらに利き手と年齢間でも有意差はなかった(Mann-Whitney U -検定: p = 0.32)。以上より、本研究の集団が等質のものと考え、左右の海馬を独立に計62個の海馬頭部のデータを解析した。// (1) 健常者におけるEPI画像上における海馬頭部の描出される割合// 40/62(65 %)で海馬が十分に描出され、残りはEPI画像で海馬頭部が欠落する所見を得た。すなわち、約1/3の割合で海馬頭部がEPI画像上欠落することがわかった。// (2) 海馬頭部が描出良好群と描出不良群間での有意となった計測指標の抽出// 上述の9因子につき、t-検定による単変量解析を施行したところ、有意水準1 %未満で内耳道垂直径(DV-IAM)と蝶形骨洞含気率(RP-SS)が抽出された。DV-IAMにおいて、海馬頭部描出良好群では1.44±0.29 cm (平均±標準偏差: 以下同様)、不良群では1.66±0.28 cmであった。RP-SSでは、海馬頭部描出良好群で71.3±32.1 %、不良群で92.0±20.9 %となった。いずれにおいても、海馬頭部の描出性と負の相関を示した。// ロジスティック回帰分析による多変量解析を施行したところ、最終的には上記単変量解析で抽出されたDV-IAMとRP-SSに加えて海馬体部-内耳道間距離(Dhippo-IAM)と海馬頭部-中頭蓋窩間距離(Dhippo-base)の計4因子が抽出された。これら4因子のうち、Dhippo-IAMのみが、海馬頭部の描出性と正の相関を示し、残りの3因子はすべて海馬頭部の描出性と負の相関を示した。// (3) 海馬描出性の推定// 上記のロジスティック回帰分析の結果から抽出された 4因子を用いて海馬頭部の描出される度合いを推定する回帰式は以下のようになった。// [海馬頭部の描出される度合い (%) ] = 100/{1+exp[-4.73+(3.32×DV-IAM [cm])+(0.0352×RP-SS [%])-(4.91×Dhippo-IAM [cm])+(2.17×Dhippo-base [cm])]}(以下において "推定式 A" と呼ぶ)// 上記推定式 Aのreceiver-operating-characteristic curve (ROC曲線)の曲線下面積は0.84となりexcellent discriminationと判定された。さらに、推定式 A においてカットオフ値を65 %とする (65 %以上のとき海馬頭部が良好な描出が得られ、65 %未満では海馬頭部の描出は不良と判定する) と、敏感度75 %、特異度86 %、陽性反応的中度91 %、陰性反応的中度66 %、的中精度79 %となることがわかった。//【考察】本研究により海馬頭部のEPI画像での有効な描出は約2/3に認められることがわかった。海馬頭部の描出性について、単変量解析では、内耳道因子としてDV-IAMが、蝶形骨洞因子としてRP-SSがおのおの抽出されたと考えられた。さらに多変量解析のロジスティック回帰分析において抽出された4因子中の2因子(DV-IAM とDhippo-IAM)が内耳道要因を反映しており、残りのRP-SSのみが蝶形骨洞の因子を、さらにはDhippo-baseは上顎洞の因子を反映していると考えられた。これらの結果より、海馬頭部の描出不良の主な要因は頭蓋底の磁化率の急激な相違による影響であり、特に内耳道と蝶形骨洞の含気の影響が強いと示唆された。この2大要因は単変量・多変量の両解析上の双方で抽出されていることがその点を裏付けていると考えられた。さらに、上記2大要因中で、内耳道要因の方が多変量解析上で、単変量解析では抽出されなかった内耳道要因を追加する形で認めていることから、蝶形骨要因よりさらに強い因子であることが推定された。// 近年の海馬機能画像研究の進歩によりfMRIによる結果とポジトロン断層撮影(PET)の結果との相違が問題となっている。この解釈で有力なものとしては各検査での行動タスクが異なる点が挙げられる。しかしながら、fMRIの場合は本研究で示したように海馬頭部が描出不良な場合が約1/3で存在することを考慮すると、実際の研究時に海馬の描出性について事前に十分検討する必要があることが推定される。よって、本研究の結果は海馬研究の際のfMRI とPETの結果の相違の1つの説明になると考えられた。// 本研究の結果により海馬頭部の描出性についての推定方法を推定式Aによって示すことができた。この式を利用して、実際の海馬研究の際の画像の品質についての注意が、さらに深められて、高品質のデータを収集する一助となると推定され、さらなるfMRI研究の基礎となると考えられた。
内容記述: 報告番号: 乙15586 ; 学位授与年月日: 2003-03-05 ; 学位の種別: 論文博士 ; 学位の種類: 博士(医学) ; 学位記番号: 第15586号 ; 研究科・専攻: 医学系研究科
URI: http://hdl.handle.net/2261/51161
出現カテゴリ:021 博士論文
医学

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