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タイトル: 利用集積地の集団化による巨大区画水田の創出
著者: 石井, 敦
著者(別言語): イシイ, アツシ
発行日: 2003年3月14日
抄録: 今後の我が国の水田稲作においては、コメ生産量の主要なシェアを占める平坦地の水田の生産コストを削減することが望まれる。競争力を持った生産コストを実現するためには、労働生産性すなわち耕作者一人当たりの耕作(経営)規模をなるべく大きくすることが必要である。そのためには、農地の利用集積(貸借)によって担い手農家の水田経営規模を数10ha以上に拡大し、利用集積された多数の小規模水田群を集団化して、一枚一枚の水田を数ha以上の巨大区画水田として整備することが望まれる。// 区画の規模は、平坦地の場合、基本的に稲作農家の経営規模によって規定される。しかし、経営規模を拡大しただけでは巨大区画水田は創出できない。利用集積に応じた地主の水田群(小作地)は零細で、かつ分散しているからである。巨大区画水田を創出するためには、何よりも利用集積された零細で分散している水田群を集団化することが必要である。この利用集積地の集団化の難しさが、巨大区画水田の創出を制約する大きな要因となっている。// そこで本研究では、現在までに巨大区画水田を創出した地区の悉皆的調査と分析を行い、利用集積地を集団化して巨大区画水田を創出する方策(換地処分による方策と耕作地調整による方策)について検討した。また、巨大区画の規模・形態を制約すると考えられてきた、換地の「接道長」について検討した。さらに、巨大区画水田に付帯する農道や用排水路等の圃場施設について調査・分析し、巨大区画水田整備によって削減しうる圃場施設とそれによる圃場整備事業費の削減効果について検討した。その結果、以下の点が明らかになった。//1換地処分による利用集積地の集団化// 換地処分によって利用集積地を集団化して巨大区画水田を創出する場合、巨大区画水田はほ場整備事業実施地区内の相対的に不利な場所(集落から遠い等)に創出されがちで、地主らがこうした不利な場所への換地を受け入れない、という問題が生ずる。この問題の解消は困難であり、実際、この手法で巨大区画水田を創出しえていたのは、貸手農家の所有規模が極めて零細な場合や、貸手農家が長期間の安定した農地貸借を望む場合といった、貸手農家側に特別な条件があった場合のみだった。//2耕作地調整による利用集積地の集団化// 耕作地調整による集団化では、上記の換地処分による集団化の困難性は回避できる。換地処分で巨大区画水田創出予定区域外に配置された利用集積地を耕作する担い手農家と、巨大区画水田創出予定区域内に換地を受けた自作継続希望農家等との間で、所有権とは別に耕作する権利だけを交換すれば、担い手農家の耕作地を集団化し巨大区画水田を創出することが可能なのである。// その際、巨大区画水田創出予定区域内に換地を受けた自作農家らに対し、巨大区画水田創出予定区域外の他人の士地での耕作を受け入れてもらうための動機付けが必要になるが、こうした動機付けは容易に確保できる。実際に耕作地調整によって利用集積地を集団化して巨大区画水田を創出していた地区では自作農家が耕作地調整を受け入れる動機付けとして、(1)耕作地調整後の耕作地が有利な場所になった、(2)耕作地調整後の面積が増加した、(3)所有地の一部を担い手農家に貸し出している農家だった、(3)近い将来の離農を想定している農家だった、(4)集落内や地域内の社会関係を保った、といったことがあった。// また、貸手農家が耕作地調整後の借手である零細自作農家の農地管理等に不安を持ち、担い手農家から零細自作農家への貸借関係の変更を望まない場合もありうるが、その場合は、担い手農家が貸手農家に対して農地の保全等の保証をする、農用地保有合理化法人を介在させる等の方策がある。//3巨大区画の形状・規模の制約条件としての換地の接道長// 利用集積地を集団化して巨大区画水田を創出する場合、巨大区画は多数の貸手農家および耕作地調整に同意した自作続行者が所有する零細な換地(所有区)で構成される。こうした場合、巨大区画の奥行きを大きく取ることが困難になることが懸念されていた。奥行きを大きく取ると、これを構成する個々の所有区は道路に接する長さが短くなり、単独では宅地としても農地としても利用が難しい形状となって、将来の宅地転用や農業の再開等の可能性を捨てていない貸手農家の要望と矛盾するおそれがあるためである。// 巨大区画の奥行きが短く制限されると、区画規模が十分に大きく取れず農業機械の作業効率の向上が難しくなるし、支線農道と小用排水路の密度が高くなり、工事費削減の点からも望ましくない。// そこで、先駆的に巨大区画水田を創出した地区を中心に実態調査を行ったところ、懸念されたとおり都市近郊のように近い将来宅地化が見込まれる地区では、個別転用に有利な所有区接道長が求められ巨大区画水田のメリットがなくなる一方で、当面宅地化が期待されない地区では、地主化した貸手農家は所有地の面積さえ確保できればよく、接道長のような形態にまではほとんど無関心で、換地の接道長が短くなる巨大区画水田の創出を受け入れていることが明らかになった。また、都市近郊であっても何らかの理由で早急には個別的な宅地転用が期待できない地区では、将来の土地区画整理による区画の割り直しを貸手農家は想定するから、当面は個別転用の難しい、接道長の短い換地を受け入れていることもわかった。// さらに、一部の貸手農家が換地の接道長の確保を求める場合は、彼らの換地を地区縁辺部等の奥行きの短い、接道長を長くとれる箇所に定めて、求められる接道長を確保する方策もあること、貸手農家が復農する場合は大規模借地農家の別の耕作地を代替地として耕作してもらう方策があることもわかった。// このように巨大区画水田の創出において、利用集積地の換地の接道長制約は基本的には顕在化せず、顕在化した場合でも回避できるのである。//4圃場施設建設量の削減// 圃場整備では、区画規模を拡大することにより整備すべき用水路、排水路、農道といった圃場施設の密度が低下し、圃場整備にかかる建設量が削減できる効果が見込まれる。そこで、実際に整備された巨大区画水田を対象に、これら圃場施設の整備状況に関する調査・分析を行った。// その結果、巨大区画水田整備では、現在実施されている圃場整備事業でいう「小用水路」や「小排水路」を省略できる可能性があることが明らかになった。用水路工と排水路工の圃場整備事業費に占める割合は50%以上だから、小用排水路を省略することで圃場整備事業費の削減効果も期待できる。// 一方、実際に創出された巨大区画水田の中には、圃場施設の密度が30a〜50a区画での圃場整備とぼぼ変わらないケースがあったが、これは、(1)圃場整備事業の計画当初は農地の利用集積および利用集積地の集団化の計画が不確実だったため、30〜50a区画でも利用できるように整備した、(2)巨大区画が創出された農区内に零細自作者らの耕作する小区画水田が混在しており、これの潅漑排水のため巨大区画に沿って小用排水路を敷設せざるを得なかった、(3)隣接する農区が零細自作者らの耕作する小区画水田で構成されているため、隣接する巨大区画水田にも結果として小用排水路が付帯した、といった事情があった。// 巨大区画水田整備において圃場施設を削減するためには、圃場整備事業の計画の段階で農地の利用集積および利用集積地集団化の計画をかため、巨大区画として整備する区域を確定すること、また、巨大区画水田として整備する区域と小区画水田として整備する区域とをゾーン分けすることが望ましい。//5.結論// 換地処分で利用集積地を集団化して巨大区画水田を創出することは基本的には困難であるが、換地処分で集団化できない場合でも耕作地調整の手法を用いれば、担い手農家の耕作権を集団化して巨大区画水田を創出できる。// また、これまで懸念されていた換地の「接道長」による巨大区画水田創出の制約も、農家が単独での宅地転用を期待していない地区では基本的には顕在化せず、顕在化した場合でも回避できる。// さらに、巨大区画水田整備を行うことによって、労働生産性の高い稲作農業が可能となるのばかりでなく、小用排水路や農道等の圃場施設の建設量が削減される効果が見込まれる。また、圃場施設が減少することにより、それらの維持管理にかかるコストも削減される可能性もある。// このように、巨大区画水田整備の実施は可能であり、その効果も高い。今後、労働生産性の高い稲作農業を目指すのであれば、数ha以上の巨大区画水田の創出を目指すべきである。
内容記述: 報告番号: 乙15639 ; 学位授与年月日: 2003-03-14 ; 学位の種別: 論文博士 ; 学位の種類: 博士(農学) ; 学位記番号: 第15639号 ; 研究科・専攻: 農学生命科学研究科
URI: http://hdl.handle.net/2261/51173
出現カテゴリ:021 博士論文
農学

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