UTokyo Repository 東京大学
 

UTokyo Repository >
113 工学系研究科・工学部 >
99 論文博士 >
工学 >

このページ(論文)をリンクする場合は次のURLを使用してください: http://hdl.handle.net/2261/51177

タイトル: 交通の動的変化に対応した自動車からの排出ガス量推計手法の研究
著者: 小根山, 裕之
著者(別言語): オネヤマ, ヒロユキ
発行日: 2003年5月14日
抄録: 本研究は,動的な交通状況を考慮した排出量予測・評価の手法として,交通流シミュレーションを用いた新たな排出量推計アプローチを確立することを目的とするものである.//都市部,特に道路沿道の大気汚染は依然として厳しい状況にあり,改善に向けた施策の積極的な積み重ねが必要とされている状況にある.その中でも特に,発生源対策としての交通施策の充実は今後一層力を入れて取り組むべき課題である.交通施策をより大気環境の改善に資するものとして有効に機能させるためには,事前・事後の施策評価が重要であり,対象とする交通施策による交通状況の変化を的確に捉え,さらに排出量の変化,汚染濃度の予測・評価へと結びつけていかなければならない.しかしながら,これまでの交通施策による排出量削減効果の評価は静的で限定されたアプローチによるものが多く,高負荷地点の影響を適切に予測・評価することはできない.一方、近年発展の著しい交通流シミュレーションは,動的な影響を考慮する必要がある交通施策の評価に当たっては非常に重要なツールであり,速度変動の影響を適切に反映した排出量モデルとの組み合わせによって,交通の動的な変化に対応し,なおかつ局地的な影響を捉えた排出量の推計が可能となる.一般に,高負荷地点の影響を適切に捉えるためには,速度・加速度など速度変動の要因を考慮できる排出量モデルを適用する必要がある.しかしながら,交通流シミュレーションによる車両の詳細な加減速挙動の再現性は,実務レベルでの利用方法を前提とすると,詳細な車両挙動をモデル化した追従型シミュレーションでも排出量を推計するに十分な再現性を有しているとは言い難い.すなわち,排出量モデルと交通流シミュレーションにはギャップがあり,高負荷地点の影響を的確に捉えて予測するニーズの高まりにもかかわらず,そのような要請に対応し,なおかつ十分な再現性,説明力を有した自動車排出量ガス量の予測手法は確立しているとはいえない.//上記のような背景・問題意識に基づき,本研究では交通流シミュレーションを用いた新たな排出量推計アプローチを確立することを目的とする.本研究では,ある程度の空間集計単位(10〜100m程度)における速度変動の影響を考慮することにより,Hot Spotにおける排出量の空間的分布を現実的な精度で捉えるとともに,総排出量のレベルでの再現性を確保することを狙いとする.このような排出量の推計レベルを達成しようとする場合,上述した交通流シミュレーションの出力と排出量モデルの入力との間にギャップがあることになる.本研究では,このギャップを埋め,交通流シミュレーションと排出量モデルを結びつけるため,“排出量推計指標変換モデル”を導入する.これは,交通流シミュレーションにおいてある程度の再現性が期待されるラフな車両軌跡(線形近似された車両軌跡)から,排出量を適切に再現するように排出量モデルの説明変数である排出量推計指標へ変換する.この際,排出量推計指標変換モデルを,実験車を用いた実道路における走行軌跡の分析を通して設定することにより,観測された道路条件の範囲内では十分に妥当性を持った速度変動要素の再現が可能になる.既存のアプローチに比較して提案アプローチは排出量の再現性を目指したモデルとなっている点で直接的であり,排出量の再現性,説明力の向上が期待される.//本論文の構成に従いつつ,本研究の成果を簡潔に示す.//第2章では,シミュレーションモデルを用いた排出量推計に関して,排出量推計モデル,交通流シミュレーションモデル双方の観点から,既存研究に関するレビューを整理した.その結果として,ある程度詳細な空間集計単位に対応する排出量モデルとして必要とされる入力と,交通流シミュレーションで期待される出力の間にはギャップが存在することを指摘した.//第3章では,第2章で整理した問題点を踏まえ,交通流シミュレーションと排出量モデルのギャップを踏まえた新たな排出量推計アプローチを提案した.具体的には,シミュレーションのアウトプットとして,ある程度再現性が検証可能な車両のマクロな挙動(停止位置,マクロな速度変化点,停止位置間の平均速度など,すなわち「線形近似された車両軌跡」)が再現されていることを前提とする.また,対応する排出量モデルとしては,推計対象とする空間集計単位における集計量を説明変数とする速度変動要素モデルを設定する.これらのモデルを結びつけるものとして,「排出量推計指標変換モデル」を導入した.これは,車両軌跡の停止位置,速度変化点などの情報,あるいは道路諸元,交通条件などを元に,排出量モデルの説明変数(排出量推計指標)の空間分布を推計するもので,別途実施される走行調査などのデータを用いて設定される.既存の排出量推計アプローチがまずは速度プロファイルの再現を目指し,そこで得られる速度,加速度を排出量モデルに代入して排出量を推計するものが多いが,速度プロファイルの再現性が排出量推計という視点から十分な精度を有しているかは定かではなく,再現性,説明力に欠ける.一方,本提案アプローチは,車両のマクロな挙動から排出量推計指標を推計しようとするものであり,排出量の再現性を目指したモデルとなっている点で直接的であり,既存のアプローチに比較して排出量の再現性,説明力の向上が期待される.ここで排出量推計指標変換モデルを導入することにより,必ずしも詳細な加減速挙動を再現できなくても排出量の平均的な空間分布が推計できるため,いわゆるQ-Kモデルなどのマクロシミュレーションでも排出量の推計が可能となる.//第4章ではある程度の空間集計単位で必要十分な精度を有する排出量モデルとして,エンジン出力ベースの速度変動要素モデルを構築した.このモデルは,推計対象となる空間集計単位(概ね10〜100m程度)における集計量(排出量推計指標)を説明変数とするモデルである.モデル構築に当たっては,距離で集約することを前提としたギヤ比に関する簡便な仮定を導入することにより,低速域における精度の向上を図った.このモデルに対して,ディーゼル貨物車を対象にシャシダイナモ台上試験で得られたデータを用いてモデルパラメータの算出を行い,NOx,CO2などについて良好な再現性(R>0.9)を得た.また,既存のモデルとの比較を通してモデルの有効性を確認し,特に,ギヤ比の影響がある低速域での再現性向上が認められた.また,パラメータ推定の際の集計距離とモデルの精度の関係を分析し,精度が集計距離に大きく依存し,20〜100m程度の空間集計距離でのパラメータ推定がもっとも適切であると結論付けた.また,既存の排出量推計アプローチとして,瞬間の速度・加速度を用いた排出量モデル,平均速度式を用いた排出量モデルなどを取り上げて比較を行った.その結果,本アプローチが平均速度式に対しては飛躍的な精度の向上を達成し,瞬間の速度・加速度を用いた排出量モデルに対しては,同等かそれ以上の精度を得ていることが示された.//第4章で構築した排出量モデルの大きな特長として,排出量推計指標を用いた排出要因別の理論的分析に応用できる点が挙げられる.第5章ではこの排出量モデルを用いた理論的分析として,加速度,減速度一定,自由流旅行速度一定の簡単な車両の停止・発進挙動をモデル化して,提案した排出量モデルを適用することにより,排出量の空間分布と車両挙動の関係を分析した.また,上記の車両挙動モデルを発展させ,孤立交差点を対象とした車両群の停止・発進挙動に伴う排出量の空間分布を定式化し,いくつかのケースを設定したモデル分析を行った.その結果として,加減速度,ジャム密度,自由流旅行速度,遅れ時間が排出量の空間的分布及び排出強度に大きく影響を与えることなどが示された.また,スプリットを固定したままサイクル長を変動させたケースで,サイクル長を短くすることにより遅れ時間及び排出総量は低減するが,交差点近傍に停止・発進挙動が集中するため,単位時間当たりでは局地的に排出量が増大するケースが見られた.このようなケースは,排出量の空間分布を捉えることの重要性を示すものである.さらに,上記モデルの応用として,孤立交差点での排出量の観点からの最適スプリットを分析した.結論として,交差点全体の飽和度に余裕があり,主従の交通量に差がある場合,主道路側に若干大きなスプリットを割り振ると,総遅れ時間は増加するものの停止回数が相対的に減少することにより排出量が低減することを示した.//第6章では,本研究で提案した排出量推計アプローチの中核をなす排出量推計指標変換モデルの定式化・構築を行った.排出量推計指標変換モデルは,交通モデルの出力として与えられる直線近似された車両軌跡に対して,平均加減速範囲のモデルに基づき加速・減速・定速・停止の各モードに分割した上,排出量推計指標の空間分布モデルを当てはめる手法である.この中で,実際の車両軌跡と直線近似された車両軌跡の関係を関連づけ提案し,上記の変換モデルを用いた排出量推計のフローを示した.//また,走行調査の測定データを用いてモデルパラメータの推定を行うとともに,排出量推計指標の空間的分布に関する特性分析を行った.得られたモデルパラメータを用いて,排出ガスが実測されている車両の走行データを用いて検証を行ったところ,平均的なレベルの再現という観点では,実用上十分な推計レベルで空間分布が再現できたと考える.//第8章では,本研究で得られた成果をまとめるとともに,本研究で積み残された課題の整理,今後の研究への展望を述べた.//以上の通り,本研究では,交通流シミュレーションを用いた現行の排出量推計アプローチの問題を指摘し,新たな排出量推計アプローチとして,1)シミュレーションのアウトプットとして,再現性が検証できる線形近似された車両挙動を用い,2)排出量推計指標変換モデルで排出量モデルのインプットに変換し,3)排出量モデルとしてはある程度の空間分解能の集計量を説明変数とするものを構築した.まだ各モデルに課題が残されているものの,ある程度実用的なモデルとして確立されたものと考えられる.
内容記述: 報告番号: 乙15682 ; 学位授与年月日: 2003-05-14 ; 学位の種別: 論文博士 ; 学位の種類: 博士(工学) ; 学位記番号: 第15682号 ; 研究科・専攻: 工学系研究科社会基盤工学専攻
URI: http://hdl.handle.net/2261/51177
出現カテゴリ:021 博士論文
工学

この論文のファイル:

ファイル 記述 サイズフォーマット
K-215682-1.pdf8.36 MBAdobe PDF見る/開く
K-215682-2.pdf6.17 MBAdobe PDF見る/開く
K-215682-3.pdf9.5 MBAdobe PDF見る/開く
K-215682-4.pdf9.52 MBAdobe PDF見る/開く
K-215682-5.pdf2.22 MBAdobe PDF見る/開く

本リポジトリに保管されているアイテムはすべて著作権により保護されています。

 

Valid XHTML 1.0! DSpace Software Copyright © 2002-2010  Duraspace - ご意見をお寄せください