UTokyo Repository 東京大学
 

UTokyo Repository >
113 工学系研究科・工学部 >
22 電気系工学専攻 >
1132225 修士論文(電気系工学専攻) >

このページ(論文)をリンクする場合は次のURLを使用してください: http://hdl.handle.net/2261/53522

タイトル: 細胞の運命決定における細胞内ダイナミクスの比較解析
その他のタイトル: Comparative analysis of potential- and noise-induced intracellular dynamics for cellular decision-making
著者: 山田, 智之
著者(別言語): Yamada, Tomoyuki
発行日: 2012年3月22日
抄録: 近年の実験的技術の革新により、細胞が生息する環境や細胞を構成する細胞内反応には不可避的にノイズや確率性が存在することが明らかになってきた。しかしながら細胞は、確率性を持つ分子を活用しながらも、様々な機能を揺れ動く環境の中で安定に実現することができる。どのようにして細胞が確率性の高い素過程から安定な機能を実現しているか、その原理は未だ明らかにされていない。細胞がノイズに対処するための方策として、大きく2つの方法がこれまでに知られている。一方は一細胞レベルでのメカニズム、もう一方は集団レベルでのメカニズムである。一細胞レベルでのメカニズムとは、例えば細胞が双安定なポテンシャルを持つことでノイズに対する頑健さを実現し、ノイズ下でも問題なく振る舞う機構である。集団レベルでのメカニズムは、細胞同士が信号伝達物質を交換することで細胞間情報伝達(cell-cell communication)を実現し、集団でノイズ対策を行うというものである。この2つは必ずしも背反するものではなく、細胞内では状況に応じて協同的に活用されていると考えられる。これまで1細胞内情報処理は主に力学系の知見を元にして考えられ、細胞が双安定なポテンシャルを持つ場合(deterministic potential-induced bistabilityダイナミクスと呼ぶ)のみが考えられてきた。これに対し最近、最適な細胞の情報復号化プロセスがnoise-induced bistabilityの特性を持つことが新たに示された。しかしながら、情報処理能力の観点からのpotential-inducedダイナミクスとnoise-inducedダイナミクスの違いは、これまで生物学的にも、またさらにより純粋な理論的視点からもほとんど解析されていない。その本質的な差を解明することは、生命システムのノイズへの安定性の原理を明らかにするために必要なだけではなく、生命システムから得られた知見を工学的に応用することにも資すると考えられる。本研究において、我々はこの問題に数理的アプローチで取り組み、potential-induced bistabilityとnoise-induced bistabilityの性質の違いを比較解析によって明らかにした。まず最初に上記2つのbistabilityを統合するような細胞内ネットワークのモデルを新規に提案し、それらの相対的な強さを変更して両者の違いを解析した。次に我々はnoise-induced bistability とpotential-induced bistabilityの効果をより明白に比較するため、noise-induced bistabilityと確率的分岐構造を共有する新たなpotential-induced bistableモデルを構築した。このモデルを解析したことによりpotential-induced bistabilityには応答速度と安定性のトレードオフ関係が存在し、noise-induced bistabilityと比べるとどちらか一方の利点しか発揮することができないことが明らかになった。その後、作成したモデルに細胞間コミュニケーションをさらに導入し、2つの1細胞内ダイナミクスへの相互作用の影響を解析した。これにより両方のbistabilityにおいて細胞間コミュニケーションは状態遷移のゆらぎを小さくすることがわかった。potential-induced bistabilityはnoise-induced bistabilityと比較するとゆらぎの対処に偏りがある。また、potential-induced bistabilityでは相互作用が強くなると平衡点での安定性が高まる分、状態遷移時間が遅くなるというトレードオフ関係が観察された。相互作用を強くするとnoise-induced bistabilityは単調に応答時間が短くなり、ノイズに対して適切に振る舞うことができたが、potential-induced bistabilityでは集団平均値は直線的に状態遷移し応答時間に遅れが目立つようになることが明らかになった。このようにnoise-induced bistabilityとpotential-induced bistabilityの比較解析を行った結果、noise-induced bistabilityの方がノイズのある環境下において柔軟に応答できることがわかった。
内容記述: 報告番号: ; 学位授与年月日: 2012-03-22 ; 学位の種別: 修士 ; 学位の種類: 修士(工学) ; 学位記番号: ; 研究科・専攻: 工学系研究科電気系工学専攻
URI: http://hdl.handle.net/2261/53522
出現カテゴリ:025 修士論文
1132225 修士論文(電気系工学専攻)

この論文のファイル:

ファイル 記述 サイズフォーマット
37106508.pdf5.85 MBAdobe PDF見る/開く

本リポジトリに保管されているアイテムはすべて著作権により保護されています。

 

Valid XHTML 1.0! DSpace Software Copyright © 2002-2010  Duraspace - ご意見をお寄せください