WEKO3
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まず可移植性腫瘍細胞株・B16悪性黒色腫(melanoma)をマウス尾静脈内接種したときの転移数を指標として、がん細胞の排除におけるサイトカインの役割を評価した。IFN-γ、TNF-α、IL-1、IL-6それぞれのKOマウスにおけるB16細胞の実験的転移は、IFN-γKOマウスのみで転移の亢進が認められ、他のサイトカインKOマウスでは野生型と有意な差は認められなかった。このことは、これらサイトカインの中では、IFN-γが転移の抑制に特に重要であることを示している。IFN-γはB16細胞に対してin vitroで増殖抑制作があるだけでなく、免疫担当細胞の活性化にも関与していることから、次にIFN-γ受容体(R)KOマウスを用いることにより(IFN-γR KOマウスではIFN-γによる免疫担当細胞の活性化の可能性を排除できるため)、その作用部位について検討を行った。IFN-γR KOマウスにおけるB16の実験的転移は野生型と差がなかったことから、IFN-γはB16細胞に対して直接作用することにより転移を抑制していることが明らかになった(図1A)。一方では、B16移植後の生存日数および皮下移植による腫瘤形成実験においては、IFN-γR KOマウスは野生型とIFN-γKOマウスの中間的な値を示すことがわかった(図1B)。このことから、転移初期の抑制はIFN-γの腫瘍細胞に対する直接の作用が特に重要であり、宿主側の抗腫瘍機構の活性化作用は後期の腫瘤形成の時期に必要となることが示唆された。 次に、がん細胞の発生過程からのサイトカインの役割を評価するために、まず化学発癌剤・メチルコラントレン(methylchoranthrene: MCA)投与による化学誘導発がんをIFN-γ、TNF-αKOマウスで検討した。IFN-γKOマウスでは発症の早期化が認められたが、これに対してTNF-αKOマウスは野生型と同じであった。MCA誘導発がんは宿主側の免疫監視機構が発症の抑制に重要な役割を果たしていることが知られており、IFN-γの重要性とTNF-αは関与していないことが示唆された。 続いて、遺伝子の変異による自然発症としてヒト家族性大腸ポリープ症のモデルマウスであるApcMin (adenomatous polyposis coli / multiple intestinal 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遺伝子欠損マウスを用いたサイトカインの抗腫瘍作用の解析
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-16 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 遺伝子欠損マウスを用いたサイトカインの抗腫瘍作用の解析 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
タイプ | thesis | |||||
ID登録 | ||||||
ID登録 | 10.15083/00004240 | |||||
ID登録タイプ | JaLC | |||||
著者 |
角田, 茂
× 角田, 茂 |
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著者別名 | ||||||
識別子 | 9700 | |||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
姓名 | カクタ, シゲル | |||||
著者所属 | ||||||
著者所属 | 東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻 | |||||
Abstract | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | サイトカインはリンパ球やマクロファージ、造血系細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイトなどの種々の細胞から産生される、すなわち"多数の異なる細胞から産生され、多数の異なる細胞に働きかけるポリペプチド"として定義され、インターロイキン(interluekin: IL)や腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor: TNF)、インターフェロン(interferon: IFN)などが含まれる。これらサイトカインは複雑なネットワークを形成しながら、細胞の生死や増殖、分化の調節など多様な生理作用を持つことが知られている。がん細胞に対しても同様に生死や増殖に作用することが投与実験から示され、さらには免疫系の活性化を調節している因子でもあることから、がんの発生や進行、転移の過程で少なからず影響を与えていると推測されていた。しかし、がんと内因性のサイトカインとの関わりについては、これまでほとんど解析がなされていなかった。 一方、近年の発生工学の進歩により数多くのサイトカイン遺伝子欠損(KO)マウスが作製され、内因性のサイトカインの役割の解析に非常に有効な手段として研究に用いられている。そこで本研究では、サイトカインKOマウスを用いることにより内因性のサイトカインの抗腫瘍作用について検討を行った。サイトカインとしては、がん細胞に対する増殖抑制などの作用を持ち、さらには免疫機能の調節にも重要な役割を担っている炎症性サイトカインIFN-γ、TNF-α、IL-1、IL-6に注目した。 第1章では、KOマウスを用いたin vivoの抗腫瘍作用として2つのステップ、すなわち、すでに発生したがん細胞の排除の過程と、化学誘導または遺伝子変異によるがん細胞の発生の過程について、それぞれサイトカインの役割を検討した。 まず可移植性腫瘍細胞株・B16悪性黒色腫(melanoma)をマウス尾静脈内接種したときの転移数を指標として、がん細胞の排除におけるサイトカインの役割を評価した。IFN-γ、TNF-α、IL-1、IL-6それぞれのKOマウスにおけるB16細胞の実験的転移は、IFN-γKOマウスのみで転移の亢進が認められ、他のサイトカインKOマウスでは野生型と有意な差は認められなかった。このことは、これらサイトカインの中では、IFN-γが転移の抑制に特に重要であることを示している。IFN-γはB16細胞に対してin vitroで増殖抑制作があるだけでなく、免疫担当細胞の活性化にも関与していることから、次にIFN-γ受容体(R)KOマウスを用いることにより(IFN-γR KOマウスではIFN-γによる免疫担当細胞の活性化の可能性を排除できるため)、その作用部位について検討を行った。IFN-γR KOマウスにおけるB16の実験的転移は野生型と差がなかったことから、IFN-γはB16細胞に対して直接作用することにより転移を抑制していることが明らかになった(図1A)。一方では、B16移植後の生存日数および皮下移植による腫瘤形成実験においては、IFN-γR KOマウスは野生型とIFN-γKOマウスの中間的な値を示すことがわかった(図1B)。このことから、転移初期の抑制はIFN-γの腫瘍細胞に対する直接の作用が特に重要であり、宿主側の抗腫瘍機構の活性化作用は後期の腫瘤形成の時期に必要となることが示唆された。 次に、がん細胞の発生過程からのサイトカインの役割を評価するために、まず化学発癌剤・メチルコラントレン(methylchoranthrene: MCA)投与による化学誘導発がんをIFN-γ、TNF-αKOマウスで検討した。IFN-γKOマウスでは発症の早期化が認められたが、これに対してTNF-αKOマウスは野生型と同じであった。MCA誘導発がんは宿主側の免疫監視機構が発症の抑制に重要な役割を果たしていることが知られており、IFN-γの重要性とTNF-αは関与していないことが示唆された。 続いて、遺伝子の変異による自然発症としてヒト家族性大腸ポリープ症のモデルマウスであるApcMin (adenomatous polyposis coli / multiple intestinal neoplasia)マウスとこれらのサイトカインKOマウスとの交配することによって、腸管ポリープ形成におけるサイトカインの関与を検討した。ApcMinマウスは加齢に伴って主に小腸に多数のポリープを形成するが、IFN-γKOマウスでは野生型とほぼ同様であり、ポリープ形成においてはIFN-γは抑制には関与していないことがわかた。この結果は、ポリープ形成の抑制に免疫監視機構は機能していないとの報告と一致していた。TNF-α、IL-6 KOマウスについても野生型と同じ発生数であった。一方、IL-1の内因性抑制因子であるIL-1Ra (receptor antagonist)のKOマウスとの交配により小腸においては有意なポリープ形成の早期化が認められ、さらに大腸においてはポリープ発生数が著しく増加していた(図2A)。このことから、IL-1Raがポリープ形成抑制に重要な役割を担っていることが示唆された。しかし、IL-1 KOマウスでは野生型と変わらないポリープ形成が認められたことから、他のサイトカインによってIL-1の機能が代償されている可能性が示唆された(図2B)。IL-1α、IL-1β、IL-1Raは腸管ポリープ形成に伴いポリープ局所で強く発現が誘導され、ポリープ形成に対してプロモーション作用を持つCOX (cyclooxygenase)-2のmRNAの発現誘導に作用していると考えられたが、予想に反してIL-1 KO、IL-1Ra KOマウス共に発現レベルに野生型と大きな差はなかったことから、ポリープ局所でのCOX-2の誘導にIL-1は関与していないことが示唆された。一方、ポリープ形成促進作用が知られている核内受容体PPAR (peroxisome proliferator-activated receptor)-γの発現がIL-1Ra KOマウスではポリープ局所で亢進していることから、IL-1によるポリープ形成促進はPPAR-γの系を介している可能性が示唆された。 第2章では、IFNは腫瘍細胞に対して増殖抑制やアポトーシスの誘導など直接作用することが重要であることを第1章で明らかにしたことから、その作用を担う細胞内シグナル伝達経路にも着目した。IFN-γ処理によってB16悪性黒色腫細胞に強く誘導される遺伝子の中で、2',5'?オリゴアデニル酸合成酵素(2',5'-oligoadenylate synthetase: 2-5OAS)遺伝子がその候補遺伝子の一つと考えられたことから、2-5OASの抗腫瘍機能を検討するために、KOマウスの作製を試みた。まず、KOマウス作製に先立ってマウス2-5OAS遺伝子の構造の解析を行った。マウスゲノムDNAの解析、およびEST (expression sequence tag)データベースの検索から新規のマウス2-5OAS遺伝子を6つクローニングすることに成功した。その結果、ヒトでは独立した4つのクラスの遺伝子からなるファミリーを形成しているが、マウスではその中の2つのクラス(OAS1、OASL)で遺伝子増幅を起こしてサブファミリーを形成しており、少なくとも計11の遺伝子からなることを明らかにした。同時にゲノム構造も解析し、OAS1サブファミリー遺伝子(少なくとも7つ)、Oas3、Oas2が約220kbの領域にクラスターを形成していることがわかった(図3)。2-5OASファミリー遺伝子mRNAの発現は、IFN誘導剤であるpoly I:C刺激により全て誘導されるが、未刺激状態での各臓器ごとの発現分布はそれぞれ異なっていた。この結果から、これらの遺伝子間で機能の相違があることが示唆された。また、大腸菌内で発現させた組み換えタンパク質を用いた実験から、全ての2-5OASファミリー分子は二本鎖RNAとの結合能は有しているが、マウス特有の遺伝子群については酵素活性を欠くことがわかった。このことはATP結合モチーフに変異があるなどのアミノ酸配列上の特徴とも一致しており、これらの分子が古典的2-5Aシステムの制御には関与していないことが予想された。以上の結果を踏まえて、2-5OAS遺伝子ファミリーの中で、その原型であり最も基本的な遺伝子OaslaのKOマウスの作製を行い、生殖系列への伝達に成功した。今後、2-5OAS遺伝子の個体における生理機能の解析、抗腫瘍作用の解析に非常に有用であると考えられる。 | |||||
書誌情報 | 発行日 2002-03-29 | |||||
日本十進分類法 | ||||||
主題 | 491.8 | |||||
主題Scheme | NDC | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||
学位 | ||||||
値 | doctoral | |||||
学位分野 | ||||||
Veterinary Medical Science (獣医学) | ||||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | University of Tokyo (東京大学) | |||||
研究科・専攻 | ||||||
Department of Veterinary Medical Sciences, Graduate School of Agricultural and Life Sciences (農学生命科学研究科獣医学専攻) | ||||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2002-03-29 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲17250 | |||||
学位記番号 | ||||||
博農第2446号 |