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3Y1ラット胎児由来繊維芽細胞は、よく伸展して形態が観察し易く、かつ継代も簡単で性質が正常細胞に近いので、これを用いた。作用機序が分かっている26種の化合物がどのような形態変化を引き起こすのかを観察したところ、11種の化合物が特徴的な形態変化を引き起こした。したがって、誘導された細胞形態をもとに、薬剤の作用点を推定できる可能性が示唆された。次に、1997年から2000年にかけて、タイSichang島、マリアナ諸島、トカラ列島、大隅諸島、甑島列島、鹿児島県川辺郡坊津町、宮崎県日南大島、天草諸島、高知県沖の島、伊豆諸島、静岡県熱海市において採集された海綿(293検体)、腔腸動物(89検体)、コケムシ(6検体)、ホヤ(49検体)の計437検体から調製した脂溶性および水溶性画分についてスクリーニングを行った。その結果、何らかの形態変化を引き起こしたものは、海綿では45%と最も多く、続いてホヤ(39%)、腔腸動物(35%)、コケムシ(33%)の順に活性発現頻度が高かった。従って、探索源として海綿が最も有望であることが明らかになった。また、アクチン脱重合、チューブリン重合阻害あるいはチューブリン安定化作用など、細胞骨格系への影響がもっとも多く見られ、全検体の10%を占めた。なお、海域や動物門ごとに検出頻度の高い形態変化のタイプが異なることも明らかとなった。次に、スクリーニングで浮かび上がった有望検体から活性物質の単離と構造決定を試みた。2.馬毛島産海綿Stelletta globostellataからの紡錘形の細胞形態を誘導する物質の単離と構造決定 鹿児島県馬毛島産海綿Stelletta globostellataの脂溶性画分は、3Y1細胞の伸展を抑制し、紡錘形の細胞形態を誘導した。この海綿から単離された細胞毒性イソマラバリカントリテルペンglobostellatic acid A (1)はそのような作用を示さなかったので、形態変化誘導物質の検索を行った。試料をエタノールで抽出後、溶媒分画、ODSクロマトグラフィー、ゲル濾過、HPLCにより5種の活性物質を得た。これらのうち、2種は既知物質のイソマラバリカントリテルペンstelliferin A (2)およびD 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proliferumの抽出液は、3Y1細胞の核膜を消失させる特異な活性を示した。このような活性は、これまでに観察したことがなく、また非常に強い細胞毒性を示したことから活性の本体に興味が持たれた。冷凍試料をエタノールで抽出後、溶媒分画、CPC、ODS HPLCで順次精製して4つの活性成分を得た。そのうち一つはnamenamicin (8)と同定されたが、残りの3つは新規物質であった。そこで二次元NMRを中心とする機器分析で構造を解析したところ、いずれもβ-carbolineを有する新規エンジイングリコシドであることが明らかとなり、shishijimicin A-C (9-11)と命名した。これらの物質の相対立体構造はNOESYスペクトルおよびカップリング定数から決定した。絶対立体構造は未決定であるが、calicheamicinoneユニットについてはCDスペクトルからcalicheamicin γ1Iと同じ絶対配置を持つことが示唆された。 Shishijimicin B (10)は40nMの濃度で24時間以内に半数近くの細胞に上記の形態変化を誘導した。また、3Y1、HeLa、およびP388細胞に対する細胞毒性はIC50 0.47-6.3pMであった。5.口永良部島産未同定海綿からのRNA/タンパク質合成阻害時の形態変化を誘導する物質の単離と構造決定 鹿児島県口之永良部島で採集された未同定海綿の抽出物は、細胞毒性を発現する際、核小体の縮小、および隣り合う細胞同士の境界を不明瞭にする作用を示した。このような変化は、RNAあるいはタンパク質合成阻害剤で見られるものの、カビに対し生育阻害活性を示さなかったことから、バクテリアおよび動物細胞に選択的に作用する物質の存在が示唆された。エタノール抽出物を溶媒分画後、ゲル濾過、逆相HPLCで順次精製して一つの活性成分を得た。この物質はアルカリに対し不安定で、かつ非常に酸化され易かった。しかし、各種NMRスペクトルの解析から、本物質はヒドロキノンとキノンを有する二量体型のイソキノリンアルカロイドであることが判明したので、renieramycin J 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海洋無脊椎動物由来の3Y1ラット繊維芽細胞に形態変化を誘導する物質に関する研究
https://doi.org/10.15083/00004231
https://doi.org/10.15083/00004231b907fede-c696-40b1-8c55-bcdcb6876529
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K-117175-1.pdf (5.9 MB)
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K-117175-2.pdf (5.8 MB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-16 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 海洋無脊椎動物由来の3Y1ラット繊維芽細胞に形態変化を誘導する物質に関する研究 | |||||
言語 | ||||||
言語 | eng | |||||
資源タイプ | ||||||
資源 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
タイプ | thesis | |||||
ID登録 | ||||||
ID登録 | 10.15083/00004231 | |||||
ID登録タイプ | JaLC | |||||
その他のタイトル | ||||||
その他のタイトル | Studies on metabolites that induce morphological changes in 3Y1 rat fibroblasts from marine invertebrates | |||||
著者 |
奥, 直也
× 奥, 直也 |
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著者別名 | ||||||
識別子 | 9682 | |||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
姓名 | オク, ナオヤ | |||||
著者所属 | ||||||
著者所属 | 東京大学大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻 | |||||
Abstract | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 増殖、分化、運動、老化、細胞死など、細胞の諸機能にはタンパク質を始めとする様々な生体分子が関わっている。こうした現象を解明するため、今日では様々な手法が開発されているが、なかでも特定の分子の機能を阻害または亢進する低分子プローブを用いた方法はもっとも汎用されている。たとえば、okadaic acidやcalyculin Aは、タンパク質脱リン酸化酵素の特異的阻害剤として細胞内シグナル伝達や発がん機構の解明などに貢献をしている。そこで本研究では、細胞内の生理的変化が形態の変化に反映されることを利用して、これを指標としたアッセイ系を構築し、海洋無脊椎動物より新たなツールとなりうる物質の探索を試みた。その概要は以下の通りである。1.アッセイ系の構築およびスクリーニング 3Y1ラット胎児由来繊維芽細胞は、よく伸展して形態が観察し易く、かつ継代も簡単で性質が正常細胞に近いので、これを用いた。作用機序が分かっている26種の化合物がどのような形態変化を引き起こすのかを観察したところ、11種の化合物が特徴的な形態変化を引き起こした。したがって、誘導された細胞形態をもとに、薬剤の作用点を推定できる可能性が示唆された。次に、1997年から2000年にかけて、タイSichang島、マリアナ諸島、トカラ列島、大隅諸島、甑島列島、鹿児島県川辺郡坊津町、宮崎県日南大島、天草諸島、高知県沖の島、伊豆諸島、静岡県熱海市において採集された海綿(293検体)、腔腸動物(89検体)、コケムシ(6検体)、ホヤ(49検体)の計437検体から調製した脂溶性および水溶性画分についてスクリーニングを行った。その結果、何らかの形態変化を引き起こしたものは、海綿では45%と最も多く、続いてホヤ(39%)、腔腸動物(35%)、コケムシ(33%)の順に活性発現頻度が高かった。従って、探索源として海綿が最も有望であることが明らかになった。また、アクチン脱重合、チューブリン重合阻害あるいはチューブリン安定化作用など、細胞骨格系への影響がもっとも多く見られ、全検体の10%を占めた。なお、海域や動物門ごとに検出頻度の高い形態変化のタイプが異なることも明らかとなった。次に、スクリーニングで浮かび上がった有望検体から活性物質の単離と構造決定を試みた。2.馬毛島産海綿Stelletta globostellataからの紡錘形の細胞形態を誘導する物質の単離と構造決定 鹿児島県馬毛島産海綿Stelletta globostellataの脂溶性画分は、3Y1細胞の伸展を抑制し、紡錘形の細胞形態を誘導した。この海綿から単離された細胞毒性イソマラバリカントリテルペンglobostellatic acid A (1)はそのような作用を示さなかったので、形態変化誘導物質の検索を行った。試料をエタノールで抽出後、溶媒分画、ODSクロマトグラフィー、ゲル濾過、HPLCにより5種の活性物質を得た。これらのうち、2種は既知物質のイソマラバリカントリテルペンstelliferin A (2)およびD (3)であり、残りの3種はいずれも29位に水酸基が導入された新規stelliferin類縁体、29-hydroxystelliferin D (4)、3-epi-29 hydroxystelliferin E (5)、および3-epi-29-hydroxystelliferin E (6)と判明した。それぞれの化合物の縮合環の相対立体構造は、カップリング定数およびNOESYスペクトルの解析から求めた。化合物4および5の絶対立体配置は、12位のケトンを還元して水酸基とし、これに改良Mosher法を適用して決定した。化合物6はこれの完全アセチル体が5の完全アセチル体と1H NMRスペクトルおよび旋光度が一致したことから、絶対立体構造を導いた。化合物2-6は、0.2μMの濃度で24時間以内に上記の形態変化を誘導した。また、活性の発現に12位のケトンが重要であることが明らかとなった。stelliferin類の細胞毒性はIC50 18-60nMであった。3.トカラ列島産スナギンチャクPalythoa aff. margaritaeからの細胞の破裂死を引き起こす物質の単離と構造決定 鹿児島県中之島で採集されたスナギンチャクの一種Palythoa aff. margaritaeの水溶性画分は、ごく微量で3Y1細胞を短時間で破裂させた。バクテリアやカビに対しては生育阻害活性を示さなかったことから、動物細胞に特異的に作用することが示唆された。そこでスナギンチャク(3.2kg)をエタノールで抽出後、溶媒分画、CPCなどで分画し、最終的にTMS-HPLCで精製して活性物質0.3mgを得た。この化合物の1H NMR、FABMSスペクトル、およびHPLCの挙動はpalytoxin(7)と一致した。Palytoxin (7)は5nMで45分以内に上記の活性を示し、3Y1細胞に対する細胞毒性はIC50 0.72pMであった。4.天草諸島産ミナミウスボヤDidemnum proliferumからの核膜を消失させる物質の単離と構造決定 鹿児島県獅子島で採集されたミナミウスボヤDidemnum proliferumの抽出液は、3Y1細胞の核膜を消失させる特異な活性を示した。このような活性は、これまでに観察したことがなく、また非常に強い細胞毒性を示したことから活性の本体に興味が持たれた。冷凍試料をエタノールで抽出後、溶媒分画、CPC、ODS HPLCで順次精製して4つの活性成分を得た。そのうち一つはnamenamicin (8)と同定されたが、残りの3つは新規物質であった。そこで二次元NMRを中心とする機器分析で構造を解析したところ、いずれもβ-carbolineを有する新規エンジイングリコシドであることが明らかとなり、shishijimicin A-C (9-11)と命名した。これらの物質の相対立体構造はNOESYスペクトルおよびカップリング定数から決定した。絶対立体構造は未決定であるが、calicheamicinoneユニットについてはCDスペクトルからcalicheamicin γ1Iと同じ絶対配置を持つことが示唆された。 Shishijimicin B (10)は40nMの濃度で24時間以内に半数近くの細胞に上記の形態変化を誘導した。また、3Y1、HeLa、およびP388細胞に対する細胞毒性はIC50 0.47-6.3pMであった。5.口永良部島産未同定海綿からのRNA/タンパク質合成阻害時の形態変化を誘導する物質の単離と構造決定 鹿児島県口之永良部島で採集された未同定海綿の抽出物は、細胞毒性を発現する際、核小体の縮小、および隣り合う細胞同士の境界を不明瞭にする作用を示した。このような変化は、RNAあるいはタンパク質合成阻害剤で見られるものの、カビに対し生育阻害活性を示さなかったことから、バクテリアおよび動物細胞に選択的に作用する物質の存在が示唆された。エタノール抽出物を溶媒分画後、ゲル濾過、逆相HPLCで順次精製して一つの活性成分を得た。この物質はアルカリに対し不安定で、かつ非常に酸化され易かった。しかし、各種NMRスペクトルの解析から、本物質はヒドロキノンとキノンを有する二量体型のイソキノリンアルカロイドであることが判明したので、renieramycin J (12)と命名した。なお、本物質の相対立体構造はカップリング定数およびNOESYスペクトルから決定した。さらに、絶対立体配置は、ビスキノンとした後、14位の水酸基に改良Mosher法を適用して決定した。 Renieramycin J (12)は86nMの濃度で12時間以内に上記の形態変化を引き起こした。また、3Y1、HeLa、およびP388細胞に対する細胞毒性は、それぞれIC50 5.2, 12.3,および0.52nMであった。 以上、本研究では、細胞の形態変化を指標としたアッセイ系を用いて、437検体の海洋無脊椎動物をスクリーニングし、特異化合物探索源として多くの種類を発掘するとともに、有望な活性を示した2種の海綿、および腔腸動物とホヤそれぞれ1種から合計11種の化合物を単離、同定した。そのうち7種が新規化合物であった。なお、本アッセイの有効性も示すことが出来た。 | |||||
書誌情報 | 発行日 2002-03-29 | |||||
日本十進分類法 | ||||||
主題 | 463.6 | |||||
主題Scheme | NDC | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(農学) | |||||
学位 | ||||||
値 | doctoral | |||||
学位分野 | ||||||
Agriculture (農学) | ||||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | University of Tokyo (東京大学) | |||||
研究科・専攻 | ||||||
Department of Aquatic Bioscience, Graduate School of Agricultural and Life Sciences (農学生命科学研究科水圏生物科学専攻) | ||||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2002-03-29 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲17175 | |||||
学位記番号 | ||||||
博農第2371号 |