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異なる個体密度、品種を用いた直播栽培と移植栽培との比較2003年にウボン稲研究所内の保水性に優れた地形連鎖的に下位の水田(下位田)と保水性に劣った上位の水田(上位田)において試験を行った。両圃場とも、二等分して一方を直播栽培、他方を移植栽培とし、移植時の補助灌漑以外全て天水条件とした。個体密度に関する試験(試験1)の移植栽培では現地で広く栽培されているKDML105と、灌漑水田用半矮性早生品種IR24の2品種、直播栽培ではKDML105を用い、個体密度3段階(移植栽培では栽植密度44、25、16 株 m-2、直播栽培では播種密度12.5、6.25、3.13 g m-2)とした。品種に関する試験(試験2)では早晩性の異なる14品種・系統(以下品種)を用いた(移植栽培では栽植密度16 株 m-2、直播栽培では播種密度6.25 g 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良好な水条件下で高収量を得るための栽培方法前章では、良好な水条件下での直播栽培において高い収量が得られることを示したが、個体密度の高い直播栽培では生育後期の窒素不足による減収が懸念される。本章では、良好な水条件下で窒素不足を避けて高い収量を得る栽培方法について検討した。試験は2004から2006年にウボン稲研究所内の圃場で行った。2004年にはKDML105とIR57514の2品種を3播種密度(500、250、125 粒 m-2、それぞれ13、6.5、3.25 g m-2に相当)で散播し、幼穂分化期追肥区と無追肥区を設けた。2005、2006年にはKDML105、IR57514、HY71の3品種を2つの栽培方法(低密度多施肥法、高密度少施肥法)、2つの播種日(5月、6月)の4条件で栽培した。低密度多施肥法、高密度少施肥法における播種密度、窒素施肥量はそれぞれ125粒 m-2と500粒 m-2(それぞれ3.25、13 g m-2に相当)、9 g m-2と5 g m-2とした。いずれの年も、雑草は手取り除草により防除した。2004年には、播種密度の収量への影響は有意でなく、追肥により一穂穎花数、収量が増加する傾向が見られた。穂の着粒構造に着目すると、低密度区のKDML105では追肥によって2次枝梗、3次小枝梗上の穎花数が大きく増加し、一穂穎花数が増加した。このことから、KDML105では低播種密度により穂数を抑え、追肥によって一穂穎花数を増やすことが多収に繋がる可能性が示された。2005、2006年の試験ではいずれの品種でも低密度多施肥法の一穂穎花数が高密度少施肥法より高く、収量も高かった。また、出穂から登熟までの乾物増加量は収量と正の相関を示し、低密度多施肥法において高密度少施肥法よりも高かったことから、低密度多施肥法では生育後期の乾物生産が高く高い収量が得られたと考えられた。また、5月播種では栄養成長期間が長いことによる生育後期の窒素不足が見られ、収量は6月播種より低かった。低密度多施肥法の6月播種におけるKDML105の2年間の平均収量は396 g m-2であり、これは移植栽培で報告されている最高収量と同程度であった。これらから、良好な水条件下では低播種密度、追肥、6月播種の組み合わせによって高収量を得られることが示された。第4章 直播栽培イネの生育における空間的変異の解析直播栽培では圃場内の生育のばらつきがしばしば問題となる。本章では、イネを散播、条播栽培し、圃場内の田面水分布、土壌含水率、イネ、雑草の生育の空間的ばらつきを解析し、それらの間の関係を調査した。試験は2004、2005年にウボン稲研究所で行った。両年とも品種はKDML105を用い、播種密度は250 粒 m-2(6.5 g m-2に相当)、1枚の圃場の大きさは14×20 mとした。2004年は散播栽培と条播栽培を各1枚の圃場で、2005年は3枚の圃場で散播栽培、1枚で条播栽培を行った。両年とも、条播栽培では条間30cmとし、畝間除草を行った。2004年散播栽培、条播栽培および2005年条播栽培では、圃場を4.7×6.7 mの9グリッドに、2005年散播栽培では2m四方の70グリッドに分け、それぞれの中心で調査を行った。2004年の調査項目は、イネの出芽数、登熟時地上部乾物重、穂数、穂重、雑草の生育の目視によるスコア、地上部乾物重とした。2005年には、それらに加え、田面水の有無、土壌含水率を調査した。2005年散播栽培では、セミバリオグラムによる解析も行った。両年とも、条播栽培における圃場内の生育のばらつきは散播栽培より小さく、畝間除草により雑草を防除することができたため面積あたり穂重も高かった。2005年散播栽培における田面水分布、土壌含水率、雑草の生育には空間的ばらつきが存在し、それらがイネ穂重のばらつきに影響していることが示された。これらから、圃場内の生育のばらつきを小さくするために田面水分布を均一にする土壌均平化技術の向上が必要であると考えられ、畝間除草を組み合わせた条播栽培の有効性が示された。第5章 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(東北タイ天水田におけるイネ直播栽培に関する作物栽培学的研究)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-16 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | (東北タイ天水田におけるイネ直播栽培に関する作物栽培学的研究) | |||||
言語 | ||||||
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タイプ | thesis | |||||
ID登録 | ||||||
ID登録 | 10.15083/00004297 | |||||
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その他のタイトル | ||||||
その他のタイトル | Agronomic Research on Direct Seeded Rice Production in Rainfed Lowland in Northeast Thailand | |||||
著者 |
林, 怜史
× 林, 怜史 |
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著者別名 | ||||||
識別子 | 9814 | |||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
姓名 | ハヤシ, サトシ | |||||
著者所属 | ||||||
著者所属 | 東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻 | |||||
Abstract | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 東北タイでは天水田稲作が広く行われているが、旱魃や土壌肥沃度が低いために収量は低い。また、移植に必要な労力の不足により、移植栽培から直播栽培への転換が進んでいるが、本地域に適した直播栽培技術は未だ確立されておらず、移植栽培に比べてさらに収量が低い。そこで本研究では、直播を行っている農家圃場の調査と圃場試験から、播種密度を中心として、施肥条件、播種時期、品種などの栽培条件が収量に及ぼす影響、およびそれらと水条件との関係について明らかにし、多収を得るための直播栽培技術に関する提言を行うことを目的とした。第1章 ウボンラチャタニ県の農家圃場における直播イネ収量の差異東北タイ南東部に位置するウボンラチャタニ県の農家圃場において2003、2005、2006年に、乾田直播したイネの生育調査と栽培管理者への聞き取り調査を行った。調査圃場数は各年3、5、3圃場(内2圃場は3年間共通)であった。栽培方法は年次、圃場間で大きな違いが見られ(播種密度2.3から17.2 g m-2)、直播栽培技術が確立されていないことが示唆された。収量にも大きな圃場間差があった(128から514 g m-2)が、穂数と収量との間には正の相関が認められ、高い穂数を得ることが高収量に繋がると考えられた。第2章 異なる個体密度、品種を用いた直播栽培と移植栽培との比較2003年にウボン稲研究所内の保水性に優れた地形連鎖的に下位の水田(下位田)と保水性に劣った上位の水田(上位田)において試験を行った。両圃場とも、二等分して一方を直播栽培、他方を移植栽培とし、移植時の補助灌漑以外全て天水条件とした。個体密度に関する試験(試験1)の移植栽培では現地で広く栽培されているKDML105と、灌漑水田用半矮性早生品種IR24の2品種、直播栽培ではKDML105を用い、個体密度3段階(移植栽培では栽植密度44、25、16 株 m-2、直播栽培では播種密度12.5、6.25、3.13 g m-2)とした。品種に関する試験(試験2)では早晩性の異なる14品種・系統(以下品種)を用いた(移植栽培では栽植密度16 株 m-2、直播栽培では播種密度6.25 g m-2)。雑草は手取り除草により防除した。両試験を通して、下位田では10月末まで湛水していたが、上位田では非湛水期間が長く、10月以降厳しい旱魃が起こった。両試験とも、移植栽培では下位田と上位田の収量に有意差はなく、直播栽培では下位田の収量が上位田より高かった。また、下位田では直播栽培の地上部乾物重、穂数が移植栽培より高く、収量も高かった。このことから、良好な水条件下では直播栽培の方が移植栽培より個体密度が高いために高収量が得られることが示された。試験1では、KDML105の穂数は個体密度が高いほど高く、下位田直播栽培では収量への個体密度の影響はなかったが、それ以外では高、中密度区の収量が低密度区より高い傾向が見られた。このことから、良好な水条件下の直播栽培では低密度で高い収量が得られるが、移植栽培や生育後期旱魃条件下の直播栽培では中密度で多収となる傾向があることが明らかとなった。移植栽培におけるKDML105の地上部乾物重はIR24より高かったが、収穫指数が低く両品種の収量に有意差はなかった。試験2では収量に有意な品種間差異が見られた。上位田では旱魃前に出穂を迎えた早生、中生品種の収量が高く、旱魃逃避性が認められた。両圃場の移植栽培では穂数の高い品種が多収となり、下位田における直播栽培では一穂穎花数の高い品種が高い収量を示した。これらから、個体密度が低い移植栽培では穂数が収量に貢献するが、個体密度が高く十分な穂数が得られる良好な水条件下における直播栽培では一穂穎花数が収量に影響することが示された。また、早生品種のHY71と中生品種のIR57514-PMI-5-B-1-2(以下IR57514)は個体密度の高い直播栽培でのみ高い乾物生産、収量を示した。これらから、圃場の水条件や栽培方法によって開花期、穂数、一穂穎花数の重要性が異なり、各条件に適した特性を持つ品種を選択することにより高収量を得られることが示された。第3章 良好な水条件下で高収量を得るための栽培方法前章では、良好な水条件下での直播栽培において高い収量が得られることを示したが、個体密度の高い直播栽培では生育後期の窒素不足による減収が懸念される。本章では、良好な水条件下で窒素不足を避けて高い収量を得る栽培方法について検討した。試験は2004から2006年にウボン稲研究所内の圃場で行った。2004年にはKDML105とIR57514の2品種を3播種密度(500、250、125 粒 m-2、それぞれ13、6.5、3.25 g m-2に相当)で散播し、幼穂分化期追肥区と無追肥区を設けた。2005、2006年にはKDML105、IR57514、HY71の3品種を2つの栽培方法(低密度多施肥法、高密度少施肥法)、2つの播種日(5月、6月)の4条件で栽培した。低密度多施肥法、高密度少施肥法における播種密度、窒素施肥量はそれぞれ125粒 m-2と500粒 m-2(それぞれ3.25、13 g m-2に相当)、9 g m-2と5 g m-2とした。いずれの年も、雑草は手取り除草により防除した。2004年には、播種密度の収量への影響は有意でなく、追肥により一穂穎花数、収量が増加する傾向が見られた。穂の着粒構造に着目すると、低密度区のKDML105では追肥によって2次枝梗、3次小枝梗上の穎花数が大きく増加し、一穂穎花数が増加した。このことから、KDML105では低播種密度により穂数を抑え、追肥によって一穂穎花数を増やすことが多収に繋がる可能性が示された。2005、2006年の試験ではいずれの品種でも低密度多施肥法の一穂穎花数が高密度少施肥法より高く、収量も高かった。また、出穂から登熟までの乾物増加量は収量と正の相関を示し、低密度多施肥法において高密度少施肥法よりも高かったことから、低密度多施肥法では生育後期の乾物生産が高く高い収量が得られたと考えられた。また、5月播種では栄養成長期間が長いことによる生育後期の窒素不足が見られ、収量は6月播種より低かった。低密度多施肥法の6月播種におけるKDML105の2年間の平均収量は396 g m-2であり、これは移植栽培で報告されている最高収量と同程度であった。これらから、良好な水条件下では低播種密度、追肥、6月播種の組み合わせによって高収量を得られることが示された。第4章 直播栽培イネの生育における空間的変異の解析直播栽培では圃場内の生育のばらつきがしばしば問題となる。本章では、イネを散播、条播栽培し、圃場内の田面水分布、土壌含水率、イネ、雑草の生育の空間的ばらつきを解析し、それらの間の関係を調査した。試験は2004、2005年にウボン稲研究所で行った。両年とも品種はKDML105を用い、播種密度は250 粒 m-2(6.5 g m-2に相当)、1枚の圃場の大きさは14×20 mとした。2004年は散播栽培と条播栽培を各1枚の圃場で、2005年は3枚の圃場で散播栽培、1枚で条播栽培を行った。両年とも、条播栽培では条間30cmとし、畝間除草を行った。2004年散播栽培、条播栽培および2005年条播栽培では、圃場を4.7×6.7 mの9グリッドに、2005年散播栽培では2m四方の70グリッドに分け、それぞれの中心で調査を行った。2004年の調査項目は、イネの出芽数、登熟時地上部乾物重、穂数、穂重、雑草の生育の目視によるスコア、地上部乾物重とした。2005年には、それらに加え、田面水の有無、土壌含水率を調査した。2005年散播栽培では、セミバリオグラムによる解析も行った。両年とも、条播栽培における圃場内の生育のばらつきは散播栽培より小さく、畝間除草により雑草を防除することができたため面積あたり穂重も高かった。2005年散播栽培における田面水分布、土壌含水率、雑草の生育には空間的ばらつきが存在し、それらがイネ穂重のばらつきに影響していることが示された。これらから、圃場内の生育のばらつきを小さくするために田面水分布を均一にする土壌均平化技術の向上が必要であると考えられ、畝間除草を組み合わせた条播栽培の有効性が示された。第5章 総合考察と結論1-4章の結果から、低収量条件では高播種密度が高い穂数、収量に繋がることが示された。一方、良好な生育条件では低播種密度でも高い収量が得られ、穂数より一穂穎花数が収量に影響を及ぼしていた。また、播種時期が早い(5月播種)と栄養成長期間が長くなり、生育後期の窒素不足により低収となることが示された。しかし、日長感受性の弱いIR57514では、5月播種でも栄養成長期間が大きく変化せず、6月播種との収量の差は小さかった。以上本研究の結果より、生育後期旱魃条件下や雑草の多い条件下では、播種密度を高くして穂数を増加させることが高収量に繋がることを示した。また、田面水の分布を均一にし、雑草の多い地点を減らすことが高収量につながると考えられ、土壌の均平化技術が必要であることを示唆した。さらに、畝間除草を組み合わせた条播栽培の有効性を示すことができた。一方、良好な生育条件下では、高収量を得るために一穂穎花数を増加させることが望ましく、低播種密度と多施肥(追肥)の組み合わせの有効性を示した。また、生育後期旱魃条件下では旱魃前に出穂する早生、中生品種、良好な生育条件下では一穂穎花数の高い品種、播種が早い場合には栄養成長期間が長くならない日長感受性の弱い品種を選択することが高収量につながることを示すことができた。 | |||||
書誌情報 | 発行日 2007-09-03 | |||||
日本十進分類法 | ||||||
主題 | 479.34 | |||||
主題Scheme | NDC | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(農学) | |||||
学位 | ||||||
値 | doctoral | |||||
学位分野 | ||||||
Agriculture (農学) | ||||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | University of Tokyo (東京大学) | |||||
研究科・専攻 | ||||||
Department of Agricultural and Environmental Biology, Graduate School of Agricultural and Life Sciences (農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻) | ||||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2007-09-03 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲22922 | |||||
学位記番号 | ||||||
博農第3217号 |