2024-03-28T16:08:12Z
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oai:repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp:00005602
2022-12-19T03:46:59Z
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9:233:280
超伝導体を用いた複合構造におけるスピン蓄積状態の研究
大西, 紘平
11661
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スピン依存伝導
超伝導状態
非局所スピン流注入
スピン偏極準粒子
University of Tokyo (東京大学)
博士(科学)
本研究は、微細加工された超伝導体を含む面内構造においてスピントロニクスの実験を行ったものである。超伝導体を用いたスピントロニクス、すなわち超伝導スピントロニクスは近年注目を浴びているが、スピントロニクスにおける基本的な物理量であるスピン流の超伝導状態における振る舞いは未だ完全に明らかとはなっていない。これは、スピン流がスピン拡散長と呼ばれる物質固有の物理量で記述されるが、超伝導状態におけるスピン偏極準粒子のスピン拡散長を実験的に求めることができていないためである。その大きな理由として、超伝導状態が温度や磁場に代表される外的要因に対して敏感であり、微小であるスピン流による信号のみを検出・解析することが困難であったことが挙げられる。そこで、本研究では単一の原子からなる金属超伝導体としては最も転移温度の高いニオブを超伝導体として用い、また試料構造は面内構造を用いることでスピン流による信号のみによる解析を可能とし、スピン偏極準粒子の超伝導状態での振る舞いを明らかにすることを目指した。実際の研究は、以下の流れで行った。面内構造においてニオブを用いたスピントロニクスの実験を行うためには、微細加工技術を用いてサブミクロンスケールのニオブ細線を作製する必要があった。しかし、ニオブは高融点材料であり、従来の蒸着法を用いるとニオブ細線の質が低下し、転移温度の低下がみられた。そのため、まず初めに高品質なニオブ細線の作製プロセスについての実験を行うとともに、作製される超伝導体/常伝導体界面の特性の向上を図った。次に、上述のニオブ細線作製プロセスによって作製した試料を用いて超伝導状態中におけるスピン偏極準粒子の緩和過程について調べた。まず超伝導体/常伝導体/超伝導体構造において十分低温では近接効果による準粒子流を電圧として検出できることを確認した。その後、通常の偏極のない電流、スピン偏極電流、および純スピン流を超伝導状態にあるニオブ細線へ注入し、それらの比較を行うことでスピン偏極準粒子の緩和過程に関して考察を行った。しかしながら、超伝導体/常伝導体界面の状態および注入されるスピン流の量が不明であったことから十分な解析ができたとはいえなかった。そこで、スピン流の注入量について定量的に見積もることを目指して実験を行った。具体的には純スピン流の非局所吸収現象の超伝導ギャップによる抑制効果を調べた。とくに、吸収量の励起電流依存性を調べた結果、超伝導ギャップによってスピン流の吸収が抑制されていることを確認できた。また、励起電流によるジュール熱の影響などを考慮したモデルによる数値計算による結果は実験結果と良い一致を示し、用いたモデルによって吸収量の定量的な見積もりが可能であることを示せた。
thesis
2012-03-22
2012-03-22
application/pdf
甲第28391号
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/5602/files/K-03531.pdf
jpn