2024-03-29T12:15:39Z
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oai:repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp:00005638
2022-12-19T03:47:13Z
27:38:283
9:233:280
マウス味蕾における細胞種特異的な遺伝子発現プロファイルの解析
黒川, あずさ
11727
464
University of Tokyo (東京大学)
博士(農学)
食品中の呈味物質は、口腔内上皮層の味蕾という組織に存在する味細胞で受容される。近年、味覚受容体、ならびにその下流の細胞内情報伝達関連分子が同定され、味覚の受容・伝達メカニズムが分子生物学的に解明されてきた。その結果、甘味・旨味・苦味・酸味・塩味の5基本味は、それぞれ異なる味細胞で受容されることが明らかにされた。電子顕微鏡像から特定されたtypeI~IIIの味蕾細胞種のうち、typeIIが甘味・旨味・苦味受容細胞、typeIIIが酸味受容細胞、typeIが塩味受容細胞を含むその他の細胞群に相当する。それぞれが受け持つ機能に応じて、シグナル伝達因子の発現、膜電位特性、細胞分化機構、神経との接続様式などが異なっていると推定されている。したがって、細胞種に注目した遺伝子発現プロファイルを解析することによって、より効率的に、味蕾細胞種ごとに機能する新たな分子の知見が得られることが期待された。TypeII味蕾細胞に特異的に発現する転写因子Skn-1aを欠損させたマウス(Skn-1ノックアウトマウス)は、甘味・旨味・苦味細胞が消失しており、それらの細胞に相当する数の酸味細胞が増加しているという特徴を持っている。この遺伝子改変マウスを用いて、味蕾細胞における遺伝子発現プロファイルを詳細に解析することで、特定の味蕾細胞種に発現する遺伝子を効率的に同定できるのではないかと考え、本研究を実施した。本論文では、第1章にてSkn-1ノックアウトマウスの有郭乳頭上皮を用いたDNAマイクロアレイ解析の結果を、野生型のものと比較することにより、味蕾細胞種特異的に発現する候補遺伝子を抽出できることを示した。第2章から第4章は各論であり、第1章において作成した細胞種ごとの遺伝子発現プロファイルから発展して行った研究の事例を示す。そのうち、第2章では、typeII味蕾細胞と味神経の相互作用を行う候補分子を取得し、typeII味蕾細胞はシナプスを持たないが、神経との連絡が行われていることを示唆する結果を述べた。第3章では、typeIII味蕾細胞に発現する前シナプス分子群を新たに同定し、そのうちの一つであるコンプレキシンIIをノックアウトしたマウスにおいて酸味に対する感受性が顕著に低下することを示した。第4章では、typeI味蕾細胞に特異的に発現する膜貫通分子を探索し、typeI味蕾細胞の反応性、膜電位特性を浮き彫りにする試みについて論述した。
thesis
2012-03-22
2012-03-22
application/pdf
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/5638/files/39-097015.pdf
jpn