{"created":"2021-03-01T06:18:39.658433+00:00","id":2063,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"03e829e6-3958-4ba2-9f5c-052405ac1a46"},"_deposit":{"id":"2063","owners":[],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"2063"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp:00002063","sets":["6:291:292","9:233:280"]},"item_7_biblio_info_7":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2002-12-13","bibliographicIssueDateType":"Issued"},"bibliographic_titles":[{}]}]},"item_7_date_granted_25":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2002-12-13"}]},"item_7_degree_grantor_23":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"University of Tokyo 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をレビューすることで、第一章の地域格差に関する概念が、既存理論では実質的にどのような形で扱われてきたかについて示すとともに、第三章以降の具体的な適用事例の検討のための前提知識を提供している。//第二に、アジア等の新興工業国の高度成長期の中で地域格差是正が国家政策の中に組み入れられた理由に関して、政治経済学的な分析を行っている。アジア諸国の高度成長の前提となった政体である「開発主義」は、強権政治の前提として国民の合意を得ることが必要だったため、国民全体への最終的な利益還元を宣言する意味で地域格差是正の標榜が国土政策において不可欠だった。しかし一方で開発主義の至上命題である経済成長を達成するためには、大都市圏やFTZ等への集積の形成による開発が不可避だったため、国土政策における地域格差是正政策と実際の産業政策との間に乖離が生じた。//第三に、グローバル化・情報化といった近年の動きについて、地域格差 (是正政策) と関連する部分をレビューしている。グローバル化論の典型でもあり日本の四全総での議論にもなった世界都市論 (仮説)、グローバル化や産業構造の変化を前提とした新しい地域振興理論としてポーターのクラスター論を主に取り上げ、既存理論 (成長の極理論など) との対比からグローバル化時代の変化を描いている。また情報産業の立地 (政策) についての既存文献をまとめ、一般的に述べられている性質をレビューしている。それぞれが第三章~第五章の日本・タイ・マレーシアにおける具体的な地域格差およびその是正政策の検証の該当部分と対応する形となっている。//第三章: 日本の地域格差是正政策と産業立地政策の変遷//グローバル化以前の1950~60年代に高度経済成長を達成した日本の地域格差是正政策と産業立地政策、及びその結果としての産業立地について、文献レビューを中心に検証している。//第一に、製造業を中心とする高度成長を達成した60年代の政策を取り上げ、経済成長を担った所得倍増計画と、そのアンチテーゼとして地域格差是正を担った全国総合開発計画、及びその関連施策をレビューし、その効果を地方分散という見地から検証している。第二に、石油危機やプラザ合意による円高以降に求められる高付加価値化とそれに続く情報化、さらにはグローバル化の反作用としての空洞化等を前提とした状況の中で見られた地域格差是正政策の変容を、三全総、工業再配置計画、テクノポリス、四全総、さらにそれに続く情報産業政策においてレビューしている。//この章での主要な結論としては、まず高度成長期の60年代前半の産業政策が、多様な優遇政策や規制を含む強力なものであったこと、またそうした政策に基づいて産業立地がある程度分散したことである。もちろん多くの論者がすでに述べているように、結果的には産業構造の変化 (第三次産業化) によって人口分散や都市成長の抑制には効果をあげることが出来なかった。また高度成長期終了以降の日本の政策は、テクノポリス、四全総等を見ても、少なくとも考案当初は地域格差是正(地域的配分の不平等 (地域間不平等) の是正) を主要な目的に掲げたものではなかった。その後、政治的な圧力等によって結果的に主要な目的にせざるを得なかった部分があれ、その効力は高度成長当時の同様の政策である新産工特などと比較すると弱められており、また他に国家レベルで包括的な地方分散政策は打ち出されていない。このことは、90年代以降主要な基盤産業として期待される、情報産業についての国家主導の立地政策が殆ど見あたらないことからも示される。こうしたことは、結果的に四全総まで一貫して地域的配分の不平等の是正を唱えた国土政策と、それと異なる意図をもって策定された実際の産業立地政策との乖離に表れ、しばしばホンネとタテマエといった言葉で表される国土政策の問題点が、グローバル化・情報化といった流れの中で顕在化したと考えられる。//実際の地域格差は、都市化によって一人あたり指標で主に示される一人当たり配分の不平等 (地域間不公平) が解消される一方で、地域の同質化を目指す地域的配分の不平等 (地域間不平等) の是正は進まず、また経済活動と人口の絶対的な集中が大都市に生じて過密過疎問題 (絶対的地域格差) を生じさせるに至った。//低成長時代を迎え、今後の国土政策のあり方としては、効率性を伴わない地域的配分の不平等の是正政策ではなく、環境問題を中心とした具体的な問題を伴う過密過疎問題の是正を明示的に謳い、政策の中心に据えることが求められる。//第四章: タイの地域格差是正政策と製造業立地政策・動向//グローバル化が進行した1980年代の後半から高度経済成長を達成したタイの地域格差是正政策と産業 (製造業) 立地政策、及びその結果としての立地動向、さらにはそのパターンを誘発する原因について、文献レビューと、実際の収集データを用いた独自の分折、及び特定の企業へのインタビュー調査によって検証している。//タイでは、第三次国家経済社会開発計画 (1971-76) の時点から、首都バンコクと地方圏との地域格差是正を一つの目的として取り組まれ、それは第八次計画 (1996-2001) まで引き継がれている。しかしその取り組みは一貫したものではなく、次のような違いが見られる。まず第一に、バンコクを中心とした過密地域の拡がりに応じて、地方分散の対象とする地域も次第にバンコクから遠い地域になっている。逆にいえば、製造業を主体とした高度成長期以前は、現在拡大大都市圏の範囲内にある東部臨海開発地域なども分散の対象地域と考えられていたことになる。第二に国家経済社会開発で一貫して地域格差是正を唱え、成長の極理論に基づいて地方拠点を指定するなど、地方分散を促しているようにみえるが、それを実現する実際の政策 (投資奨励、工業団地整備等) は、必ずしも国家計画に対応しているわけではなかった。特に工業団地は官営のものも大部分がバンコク近郊の県に立地し、バンコク都からの分散は促したが、大都市圏としての集中を同時に進行させることになった。またバンコク周辺での工場立地を規制する政策は特に見あたらず、地方圏での立地を差別的に優遇することは出来なかった。//結果として製造業立地は、主にバンコク都から東方向と北方向に伸び、電気電子産業などを中心とする製造業の一大集積をバンコク大都市圏を中心に形成し、そうした集積が国全体の経済発展に貢献した。このことは、バンコク近郊県を対象とした工業団地政策や東部臨海開発計画等が成功を収めたのに対し、さらに地方の県との地域格差是正を求めた国家経済社会開発計画がその文言通りにならなかったことを示している。//その中で唯一の例外が北部ランプーン県であり、北部工業団地に電気電子関連の日系企業を中心とした大きな集積を形成している。定説では、特に内陸の地方圏においては、製品の単位付加価値当たり輸送費が少ない電機電子産業は比較的地方分散に適した業種であるといわれており、航空輸送がその鍵を握るといわれている。本研究の調査から、北部工業団地に立地した企業は実際そうしたものが多いが、―方で航空輸送に依存せず陸上交通に頼るケースも多く、また電機電子産業の中でも既存の同業者集積に頼らない「一貫加工型」の業態の企業が主に立地していることが判明した。//結論として、グローバル化の下での地域格差是正は、地方立地を差別的に優遇する程の強力な政策を打ち出すことが出来ずに、国土計画において象徴的に地域格差是正を謳つていても、実際の立地政策においては拡大大都市圏の形成を容認するという矛盾した形で行われてきた。実際の立地は、現実のニーズをより反映した形で進行し、それが拡大大都市圏の形成に繋がっている。地方分散している企業もないわけではないが、特定業種 (例えば電機電子産業) の特定業態(一貫加工型)という条件がつくことになり、これらを非立地依存型業態と呼ぶことができる。特に一貫加工型という条件は、政府が地域格差是正政策の前提としてきた、成長の極理論に基づく基幹産業による地域振興や、集積の中で為されるサポーティングインダストリーの育成の前提にそぐわないものとなっており、たとえそうした企業が立地しても、地域に与える効果は労働力に関わる部分に限られると考えられる。//第五章: マレーシアの地域格差是正政策と産業立地政策・動向//グローバル化が進行した1980年代の後半から高度経済成長を達成したマレーシアの地域格差是正政策と、産業立地政策及びその結果としての立地動向、さらにはそのパターンを誘発する原因について、タイと同じスタンスで臨んでいる。但しマレーシアの場合は、1990年代後半から情報産業を中心とした高付加価値化を目指して各種の政策及び大型事業が進行しているため、タイとの類似性が認められる製造業立地については文献レビューと収集データの検討にとどめ、一方新しい基盤産業としての期待が大きい情報産業について、MSC計画を中心とした一連の政策、立地動向の他、インタビュー、アンケート調査により産業立地の意図について細かく検討している。//マレーシアでも、国家計画であるマレーシアプランを中心に1970年代から地域格差是正が謳われてきたが、それは第一義的なものではなく、土着のマレー人と移民である華人の民族間経済格差を縮小させるための二次的な手段としての位置づけでしかなかった。民族間格差是正は、農村を含む未開発地域の振興を目指す「地域発展戦略」 (=地域的配分の不平等 (地域間不平等) の是正)と、農村に多いマレー人の都市への人口移動による「人間発展戦略」 (=一人当たり配分の不平等 (地域間不公平)の是正) の両面から行われ、実際には雇用吸収力の大きい成長産業である製造業の主要な立地拠点となった都市の発展が、後者を押し進める形となった。特に1980年代後半以降は民活を機軸に政策が練られたため、基本的に強力な地方分散政策は打ち出せず、結果として既存の発展軸である半島西部海岸沿いに立地が進んでいる。製造業の立地を細かく観察すると、マレーシアの場合、その中心点はタイと異なり複数存在するが、その中で80年代後半からの経済成長を通して成長したのは首都クアラルンプールを中心とした圏域と、都市国家シンガポールの郊外にあたるジョホールバルであり、タイ同様に拡大大都市圏の成長が見て取れる。人間発展戦略を中心とした地域格差是正政策は、経済成長と相まって一人当たり配分の不平等 (地域間不公平) を修正する動きにあるものの、逆にこれまで他のアジア諸国ほどは問題でなかった都市問題や農村人口減少による農地・森林荒廃などの過密過疎問題 (絶対的地域格差) は、むしろ悪化しつつあると考えることができる。//一方、新たな基盤産業として連邦政府が振興する情報産業の立地については、政府は最終的に全国土での均等な情報化を目指しながら、さしあたって首都郊外への大規模立地を目標に、巨額の事業費を費やして情報通信インフラや都市施設を設置し、優遇政策を施して国内外から企業誘致をはかっている。マレーシアでも情報産業は基本的に首都都心 (KL) 及び副都心 (プタリンジャヤ)立地の傾向は非常に強いが、情報通信インフラを多く利用する一部の業種・業態については、政府の政策に沿って郊外への立地が進んでいる。ただし、どのような企業が分散に適しているかについては、既存の業種分類 (例えばソフト産業であるとか) では推し量ることが難しく、情報通信インフラに依存している度合い等により、同じ製品を供給していても全く違う傾向を示す場合がある。//結論として、製造業の地方分散政策については、タイ同様、強力な政策を打ち出すことができずに都市化と拡大大都市圏の形成が進んできた。しかしマレーシアの場合、農村に多いマレー人の都市化が民族間不平等を解消し、それが結果的に一人当たり配分の不平等 (地域間不公平) を解消するという点で、地域格差是正政策の一部は目的を達成していると考えることもできる。しかし、その有力な指標の一つである一人当たりGRPを見ても解消されているとは必ずしも言えず、また都市問題や農村・森林荒廃といった過密過疎問題 (絶対的地域格差) という新たな問題が生じつつある。一方で、マレーシアが既存の労働集約的な製造業にかわる新しい基幹産業と位置づけている情報産業の立地については、その都心指向という基本的性質を鑑み、とりあえず郊外への大規模インフラ投資と優遇措置によって振興を図っているが、情報通信インフラに強く依存する業態で郊外移転に応じるケースが多いことがわかる。情報産業においても、既存の業種別の立地政策ではなく、「非立地依存型業態」を同定し、該当する業態を持つ企業・事業所の地方立地を促すような政策を行うことが望まれる。//第六章: グローバル化の下での地域格差是正政策の新しい展開//本論文の調査・分析から得られた主要な知見は、以下の3つである。//I開発主義と国土政策//アジアの国土政策の特徴として挙げられる地域格差是正政策は、経済発展 (国富) を国是とした開発主義国家に不可欠な論理として登場し、高度成長の過程で定められる国土・国家計画においてほぼ例外なく触れられたものであった。それは端的にいえば、為政者が体制維持の担保として国民全体の将来の繁栄を約束する形で長期構想を示し、国民の同意を得た上で強力な政策を担っていくという意味で、不可欠な要素であった。しかし開発主義の究極の目的である経済発展は、地域格差を伴う産業の集中・集積なしでは達成できないことから、地域格差是正政策の標榜によって得た国民の同意による強権が、経済効率性を求めて地域格差を拡大するような政策の採用を促すという、矛盾を抱えたものになった。この矛盾は、都市化の動きによって一人あたり指標で格差を測る一人当たり配分の不平等 (地域間不公平) が緩和されるという形で半ば解消されたが、これは同時に過密過疎や過大都市問題などの絶対的地域格差の弊害を招くことになる。一方で、地方圏に比較的強く残された政治力が、同質化を目指す地域的配分の不平等 (地域間不平等) の是正を国土・国家計画の中に存続させていたが、近年のグローバル化・情報化による影響は、国土政策をタテマエからホンネに近づけるような動きに繋がっている。//IIグローバル化の下での地域格差是正の可能性//アジアの国土政策として本論文で取り上げた日本、タイ、マレーシアは共に、基幹産業を政策的に誘導することで地方圏に産業集積をつくり、その集積が次第に自立的に成長し周辺地域へも経済効果をもたらすという「成長の極理論」を、地域格差是正政策に用いてきた。しかし成長の極理論において地域経済の成長を促す基幹産業の同定が前提となっている一方で、アジアの高度成長期を担った産業は、まず既存集積の影響をうけて大都市に立地しがちな産業が多く、政策的に地方圏に誘導することが難しく、また地方圏へ誘導することができる産業はその周辺地域への連関効果が元々乏しいと予想される業態が多い状態となっている。したがって、基幹産業の立地の大部分は大都市に集積することになり、また例外的に地方圏に立地する企業群も、スタンドアローンな形で搬出入の大部分を域外との取引で行っていて、地域経済と切り離されたような存在になっている。こうした状況の下では、成長の極理論が理想とするような波及効果といったものは期待できず、地域への効果はせいぜい労働力に起因したものに限られると考えられる。このことは、これまでアジアの経済成長を担ってきた基幹産業である製造業だけでなく、これから担う可能性が高いと考えられる情報産業においても同様のことが言え、情報通信インフラを多用する企業が地方圏により多く出るとしても、その効果は限られたものになると考えられる。//今後、産業立地の地方分散の促進を目的に政策を考えるならば、既存集積を必要とせず交通・通信ネットワークが発達していれば地方圏にも立地できるような「非立地依存型業態」と呼べるような企業に焦点を絞った積極的な誘致活動を行えば、現在よりもある程度多くの地方立地は見込めると考えられる。それはなぜなら、地方分散政策の一部 (例えばタイの投資奨励政策) は一定の効果を持っているし、また地方圏への立地を阻む原因のいくつか (例えば熟練労働者の供給) は情報不足による偏見に基づくものもあり、政府の取り組み次第でかなりの程度解決できると考えられるからである。しかし「非立地依存型業態」を誘致することによる地方圏での効果は、その本来的な性質から限定的なものと考えなければならない。成長の極理論が示すような効果は期待できず、国土計画が唱えるような地域格差是正には限界があると考えられる。//IIIグローバル化の下での国土政策への提言//グローバル化や情報化といった近年の潮流にしたがって、世界都市仮説やクラスター論のように、地域格差を前提としていたり地域格差を煽るような傾向を持つ理論が登場してきている。また具体的な政策面でも、日本の高度成長期で行われたような産業立地の集積地での規制的政策はすでに採用出来なくなり、また地方圏を優遇する政策も相次いで廃止・縮小されるような流れになっている。経済活動がグローバル化し、国家レベルでの捕捉や管理が困難になっているという一般的事実と合わせ、地域格差は拡大し、また地域格差是正を求める政策は抑制される方向にあると考えられる。特に、グローバル化の下で自国以外の地域も産業立地の競争相手となる状況においては、国内への誘致を不利にするような地域格差是正政策は採用されず、まず国内の有力候補地 (=大都市圏) への産業誘致が優先される。//こうした流れは、開発主義の前提となってタテマエである地域的配分の不平等 (地域間不平等)の是正を謳ってきた国土・国家政策をよりホンネに戻して、経済効率性を追求し国民福祉の向上に努めるという意味では肯定的な評価となる。地域格差においても、地域的配分の不平等の是正 (地域間不平等) を目指すタテマエ上の国土・国家政策とはうらはらに、一人あたり指標による比較となる一人当たり配分の不平等 (地域間不公平) が、都市化による経済活動集積への人口集中によってかなり是正されてきている。しかし、経済活動の地理的分布が極度にアンバランスになることは、インフラ過負荷による過剰都市問題や、農村・森林荒廃等、本論文で定義した過密過疎問題 (絶対的地域格差) に伴う問題を引き起こしており、インフラが整備されつつある各国でも看過できない状況にある。//こうした前提を踏まえると、今後の各国の国土政策・地域格差是正政策は、これまでのような同質化を求めた地域的配分の不平等 (地域間不平等) の是正ではなく、過密・過疎などが引き起こす具体的問題を対象とした絶対的地域格差を「新しい格差の問題」と定義した上で、その是正・改善を主たる対象として策定するべきであると考えられる。//しかしながら、グローバル化による国家間・地域間の競争において、こうした具体的問題を伴った格差の是正政策が実効性を持つためには、一国単位での取り組みでは難しく、むしろ国際協調による国土政策により、各国で適正な国土構造を保つような手段が採られる必要があると考えられる。EUは一部ですでにそうした政策を取り入れており、そうした例をモデルにしながら取り組む必要があると考えられる。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_7_dissertation_number_26":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"乙第15506号"}]},"item_7_full_name_3":{"attribute_name":"著者別名","attribute_value_mlt":[{"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"6029","nameIdentifierScheme":"WEKO"}],"names":[{"name":"セタ, 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