{"created":"2021-03-01T06:19:27.783360+00:00","id":2845,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"add1914a-1d04-4fb7-9304-4d0b83e3e112"},"_deposit":{"id":"2845","owners":[],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"2845"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp:00002845","sets":["20:305:306","9:233:280"]},"item_7_biblio_info_7":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2005-07-13","bibliographicIssueDateType":"Issued"},"bibliographic_titles":[{}]}]},"item_7_date_granted_25":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2005-07-13"}]},"item_7_degree_grantor_23":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"University of Tokyo 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に有効であるという発想のもと探索系を構築した。すなわち、既存薬に耐性なMRSAに対して抗菌活性を示すものを選抜、続いてグリコペプチド系化合物の細胞壁調製画分添加による拮抗現象を利用してバンコマイシン等のグリコペプチド系化合物を排除し、さらに哺乳動物細胞に対する毒性試験により、毒性のない選択係数の高い培養液を探索目的の陽性サンプルとした。約4000の微生物培養液サンプルを試験した結果、BMK333-48F3株の培養液に目的の活性が認められた。//活性成分の単離精製は、寒天平板上で黄色ブドウ球菌に対する生育阻止円を指標に次のよう行った。すなわち本株の50リットルの培養液をHP-20、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよびCHP20Pカラムを用いて6種の活性成分A, B, C, D, E, Zをそれぞれ190 mg, 211 mg, 987 mg, 250 mg, 18 mg, 66 mg単離した。質量分析の結果、各成分の分子量はそれぞれ、1125, 1139, 1153, 1167, 1181および1111であった。//主成分であるC成分の構造解析は下記のように行った。高分解能質量分析よりC成分の分子式を、C51H83N11O19 であると決定し、1H-1H COSY、DEPTおよびHMQCスペクトルより部分構造を明らかにし、つづいてHMBCスペクトルより観測された13C-1Hロングレンジカップリングをもとに先に得られた部分構造を連結した。さらに相関の認められなかったラクトン周辺に関しては、D-HMBCスペクトルにより39位のメチンプロトンから1位のカルボニルへのロングレンジカップリングを観測し、以上よりC成分の平面構造が図1のようであることを明らかにした。他の成分も同様に構造解析を行い、6種の活性成分は、図1のようにいずれも8個のアミノ酸よりなる共通の環状ペプチド骨格を有し、メチレン数が異なる分岐脂肪側鎖を有することがわかった。構造式検索を行ったところ、6成分とも新規化合物であることが判明し、トリプロペプチンA, B, C, D, E, Z と命名した。//トリプロペプチン類の立体構造の解析は次の手順で行った。トリプロペプチン類の構成アミノ酸の絶対構造はトリプロペプチンC (TPPC) の酸加水分解物を精製し、マーフィー法により解析した。その結果、L-アルギニン、DおよびL-プロリン、D-アロスレオニン、L-セリン、LおよびD-スレオヒドロキシアスパラギン酸の存在が確認された。ヒドロキシプロリンは、TPPCを酸加水分解して得られたヒドロキシプロリンの解析により絶対構造を明らかにした。また脂肪側鎖の3位の立体は、TPPCを酸加水分解後に単離精製した3-ヒドロキシ-13-メチルテトラデカン酸の比旋光度からR配位であることが判明した。また、2分子ずつ含まれるプロリンおよびヒドロキシアスパラギン酸の識別は分光光学的解析では困難であるため、有機化学的手法により解決した。すなわちTPPCをバーチ還元によりプロリンのN末端選択的に還元・切断して得られた断片をマーフィー法により分析し、アルギニンに結合しているプロリンがL体であることを明らかにした。ヒドロキシアスパラギン酸はLiBH4によりラクトンを選択的に還元し、マーフィー法で分析することでラクトンを形成しているヒドロキシアスパラギン酸がL体であることを明らかにした。他の成分も同様に構造を解析し、トリプロペプチン類の絶対構造を図1のようであると決定した。//トリプロペプチン類の生物活性は下記のとおりであった。トリプロペプチン類は脂肪側鎖のメチレンが8以上連鎖した成分 (B, C, D, E) は多剤耐性菌を含む黄色ブドウ球菌、腸球菌および肺炎球菌に強い抗菌力を示した(表1)。バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE) のバンコマイシン耐性因子はVRSAの耐性因子と同じvanA遺伝子群であり、トリプロペプチン類はVREに対し感受性菌と同様に抗菌力を示したことから、目的どおりVRSAに有効であると考えられる。//またIn vitroで黄色ブドウ球菌を用いトリプロペプチン耐性菌の出現頻度を検討したところ、ゲンタミシンやリネゾリドに比べ耐性菌の出現率が低いことがわかった。マウスの黄色ブドウ球菌全身感染モデルでのトリプロペプチン類の治療効果を検討した結果、トリプロペプチン類は濃度依存的に高い治療効果が見られたが、in vitro で最も抗菌活性の強いトリプロペプチンD (TPPD, ED50 : 33.0 mg/kg) の治療効果は、抗菌活性の弱いトリプロペプチンA (TPPA, ED50 : 10.5 mg/kg) より低く、抗菌力と治療効果は必ずしも一致しなかった。//トリプロペプチン類の生物活性を評価した結果、以下の二つの興味深い知見が得られた。すなわち、トリプロペプチン類は既存薬に比べ耐性菌の出現率が低いこと、およびin vitro の抗菌力と治療効果に相関性が認められないことである。//トリプロペプチンの耐性菌の出現率が低い要因は、トリプロペプチンの作用機序に由来すると考え作用機序の解析を行った。TPPCの高分子合成阻害様式を放射ラベル体の取り込みにより解析した結果、TPPCは酢酸(脂質)およびN-アセチルグルコサミン(細胞壁)の取り込みを濃度依存的に阻害し、一方DNA, RNAおよび蛋白合成は高濃度でも阻害が認められなかった。さらにTPPCの阻害様式を経時的に見ることで、脂質合成および細胞壁合成のどちらかが主作用点なのか、もしくは双方を作用点としているかを検討した。陽性対照として脂質合成阻害剤のヘキサクロロフェンおよび細胞壁合成阻害剤のバンコマイシンを用い、各試薬のIC50値での阻害様式を調べたところ、TPPCは脂質、細胞壁合成の双方を同時期、同濃度で阻害したが、ヘキサクロロフェンは脂質合成のみ阻害し、細胞壁合成には影響が見られず、バンコマイシンは細胞壁合成を阻害し、脂質合成には影響を与えなかった。以上よりTPPCは脂質および細胞壁合成の双方をともに阻害することが示唆され、TPPC耐性菌の出現率が低い一因として、TPPCの作用点が複数あることが考えられた。//一方、トリプロペプチン類のin vitro の抗菌力と治療効果に相関性が認められなかった要因を解析するため、治療効果に影響を与える薬力学的因子について検討した。薬剤の最高血中濃度 (Cmax) 、血中にMIC値以上の薬剤が存在する時間 (TAM) のどちらが治療効果に大きく影響するかは抗菌薬毎に異なり、それは経時殺菌曲線から推測できることが知られている。TPPCはバンコマイシンと類似したパターンを示し、トリプロペプチン類の治療効果にはTAMが重要であることが示唆された。マウスに皮下投与で100 mg/kg投与したときのトリプロペプチン類の血中濃度変遷を分析したところ、CmaxはTPPAが最も高く、ついでTPPC、TPPDの順であった。治療効果に影響する貯留時間はTPPDが最も長く、抗菌力も優れていることからTPPDが最も治療効果の高いことが予測されるが、治療効果とは一致しなかった。そこでトリプロペプチン類のマウス血清50%中での遊離型比率を調べると、TPPAが15.2%と最も高くTPPCおよびTPPDは2.5%および1.8%と非常に低い値を示した。トリプロペプチン類は蛋白との相互作用が成分間で大きく異なることが明らかとなり、血中濃度変遷をもとに血中遊離型濃度がMIC値以上存在する時間を求めたところ、治療効果との間に高い相関性が認められた。//以上、微生物培養液より新規抗MRSA化合物を探索した結果、6種の新規リポペプチド系抗生物質トリプロペプチン類を発見した。各種スペクトル解析、および有機化学的手法を駆使してトリプロペプチン類の絶対構造を決定した。トリプロペプチン類は構造上の相違点である脂肪側鎖長の違いによって生体内での挙動が大きく異なり、脂肪側鎖の長い成分ほど抗菌力および血清蛋白との相互作用が強く、この両者のバランスが治療効果に反映することを明らかにした。トリプロペプチン類は、多剤耐性菌を含むグラム陽性菌に強い抗菌力を示し、複数の作用標的を持ち、さらにマウスの黄色ブドウ球菌感染モデルで優れた治療効果を示したことから、抗MRSA薬の候補化合物として期待される。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_7_dissertation_number_26":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"乙第16291号"}]},"item_7_full_name_3":{"attribute_name":"著者別名","attribute_value_mlt":[{"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"7462","nameIdentifierScheme":"WEKO"}],"names":[{"name":"ハジヅメ, 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