{"created":"2021-03-01T06:20:55.491565+00:00","id":4261,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"ac46e1e5-e326-4b50-8565-6996bd66c3b5"},"_deposit":{"id":"4261","owners":[],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"4261"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp:00004261","sets":["27:38:283","9:233:280"]},"item_7_biblio_info_7":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2005-03-24","bibliographicIssueDateType":"Issued"},"bibliographic_titles":[{}]}]},"item_7_date_granted_25":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2005-03-24"}]},"item_7_degree_grantor_23":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"University of Tokyo 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PLA2は哺乳類で20種類程度の分子種が報告されている。そこでまず、味蕾で発現しているPLA2の分子種を特定するため、ラットで報告のある13分子種について、ラット有郭・葉状乳頭上皮由来cDNAを用いてRT-PCRを行った。その結果、IB型を除く全ての分子種でcDNA断片の増幅が確認された。続いて、より詳細な発現状況を、有郭乳頭切片に対するin situ ハイブリダイゼーションにより解析したところ、IIA型のみが味蕾の一部の細胞に有意なシグナルを示した。また、味蕾におけるこのタンパク質の発現を、免疫染色によって確認した。2.PLA2-IIAの味蕾における発現解析 PLA2-IIAの免疫染色シグナルは味蕾中の一部の細胞に斑点状で観察されるという特異性があることから、この分子を発現している細胞の特性や細胞内での局在を明らかにすることで、機能を解明する足がかりとなると考え、より詳細な免疫組織学的解析を実施した。 PLA2-IIAは分泌性のタンパク質であり、味蕾細胞内での斑点状の染色シグナルは、分泌経路の途上に位置するゴルジ体での局在を反映していると推測された。そこで、ゴルジ体マーカーであるGM130およびβ-COPと免疫二重染色を行ったところ、これらのシグナルとよく重なり、分泌経路上に多く存在していることが明らかとなった。 次に、PLA2-IIAを発現する細胞の特性について調べた。味蕾中には、実際に味を受容する味細胞のほかにも、支持細胞や前駆細胞など機能の異なるいくつかの細胞種が存在していることが知られている。さらに、味細胞も味種ごとに異なる受容細胞が存在することが明らかになりつつあり、少なくとも、甘・旨味受容細胞と、苦味受容細胞に分類することが可能である。まず、PLA2-IIAを発現する細胞と味細胞の関係を調べるため、味細胞マーカーであるホスホリパーゼC β2 (PLCβ2)と免疫二重染色を行った。この結果PLA2-IIAはPLCβ2発現細胞(味細胞)の一部の細胞集団に発現していることが明らかになった。続いて、この発現が味種依存的であるかを調べるため、味細胞の中でも苦味細胞特異的に発現しているGタンパク質、gustducinとの関係を調べた。両者の発現は一部の細胞では重なり合ったが、互いに独立した関係であった。以上の結果よりPLA2-IIAは甘・旨・苦味という特定の味種には依存せずに、味細胞の一部に発現することが明らかになった。 味細胞で受容した味の情報は、味神経を介して中枢へと伝達されており、電子顕微鏡による観察から、味蕾中の約10%の細胞が味神経とシナプスを形成していることが知られている。しかしこれは、味細胞マーカーであるPLCβ2の発現細胞と比べてかなり少ないことから、味細胞の一部のみしか味神経とシナプスを形成していないと考えられた。そこで、味神経の一部のみに発現するPLA2-IIAとシナプス形成細胞との関係を調べるため、味蕾中のシナプス形成細胞で特異的に発現しているSNAP-25との免疫二重染色を行った。その結果、PLA2-IIAとSNAP-25のシグナルはよく一致した。以上の結果から、味細胞の一部のみがシナプスを形成しており、その細胞にのみPLA2-IIAが発現していると判明した。 味蕾細胞は上皮から分化し、10日前後で新しい細胞へと入れ替っていくことから、味蕾中には、分化してからの時間が異なる細胞が混在している。PLA2-IIAの発現およびシナプス形成細胞が味細胞の一部に限られているということは、これらが味細胞の分化段階に依存している可能性が考えられた。そこで、発現の開始時期を解析するため、まず、味蕾の初期形成過程である新生児ラットの有郭乳頭切片の免疫染色を行った。味蕾細胞に豊富な細胞骨格であるcytokeratin 8や、味細胞内のシグナル伝達分子であるgustducinやIP3R3は生後2日目より染色シグナルが検出されたのに対し、PLA2-IIAやシナプスマーカーであるSNAP-25は生後6日目あたりまでシグナルが確認できず、これらの分子はある程度成熟した味細胞でないと発現しないことが示唆された。続いて、成体ラット味蕾細胞においても発現開始時期を解析するため、BrdU追跡実験を行った。その結果、味蕾細胞にPLA2-IIA が発現し始めたのは、gustducinの発現よりも2日ほど遅い、4日目以降であり、より成熟化した味細胞に特異的であることが明らかとなった。 以上のことから、味細胞ではgustducinなどの味覚シグナリング分子が先行して発現し、2日ほど成熟が進んだところでシナプスが形成され、PLA2-IIAやSNAP-25が発現し、機能していると推察された(図)。 PLA2-IIAは、海馬神経細胞やPC12細胞においてエキソサイトーシスを促進させることにより神経伝達物質の放出に関与していることが報告されている。味細胞における発現は、シナプスを形成している細胞に限られていることから、同様の機能を果たしている可能性もある。3.アラキドン酸と味蕾細胞内Ca2+濃度変化の解析 PLA2の代謝産物であるアラキドン酸は、鋤鼻神経細胞において細胞内Ca2+濃度上昇を引き起こすことや、味神経応答に影響を及ぼすことから、味細胞においても、アラキドン酸が細胞内Ca2+濃度上昇を引き起こすかは興味深い。また、味細胞内でのCa2+濃度上昇は神経伝達物質を放出する重要な過程と考えられることから、単離味蕾細胞を用いたCa2+イメージングを行い、アラキドン酸が与える影響を解析した。 ラット有郭乳頭味蕾細胞を単離し、Ca2+指示薬であるFura-2により、細胞内のCa2+濃度をイメージングした。その結果、100 μMのアラキドン酸刺激により、細胞内Ca2+濃度上昇を起こす細胞が多く存在した。イメージング後の細胞を固定し、免疫染色を行ったところ、PLA2-IIA陽性細胞もこれに含まれていた。次に、細胞内で産生されるアラキドン酸によってもCa2+濃度上昇が引き起こされるかを調べるため、アラキドン酸代謝酵素であるリポキシゲナーゼ(LOX)をNDGAで阻害したところ、細胞内のCa2+濃度が上昇した。これは、LOXを阻害したことにより細胞内にアラキドン酸が蓄積し、それによりCa2+濃度が上昇したと解釈できる。アラキドン酸は様々なイオンチャンネルの活性を制御することから、味蕾細胞においても、Ca2+透過性のチャンネルや、脱分極を引き起こすチャンネルの活性に影響を与えた結果、Ca2+濃度上昇が引き起こされたものと考えられる。以上の結果から、PLA2-IIAがアラキドン酸の産生を介して細胞内Ca2+濃度を上昇させる可能性が示唆された。今後は、味物質による味細胞のカルシウム応答がPLA2-IIA阻害剤やアラキドン酸によって制御されるか否かを検討したい。 本研究は、味蕾中にPLA2を起点とした脂質セカンドメッセンジャーシグナリング経路を想定し、免疫組織学的解析により、PLA2-IIAがシナプスを形成している成熟した味細胞で特異的に発現することを見出した。この過程で、味細胞では味シグナリング分子が先行して発現し、成熟が進んでからシナプスを形成するという新たな知見も得た。PLA2-IIAの機能については、この酵素の産生物質であるアラキドン酸によって、味細胞内のCa2+濃度が上昇することを示し、味細胞カルシウムシグナリングに関わる可能性を提示した。 今後、味蕾内でのPLA2-IIAの活性化因子やアラキドン酸の作用機構を明らかにし、実際に味シグナリングや、他の現象にどのように関わっているのかを評価する必要がある。具体的には、Ca2+イメージングにより、阻害剤の影響を解析することや、培養細胞系を用いてPLA2-IIAの活性化因子やアラキドン酸の標的分子を明らかにし、さらには味蕾特異的にPLA2-IIA遺伝子を制御した動物を作出し、解析することが有効であると考える。本研究で得られた知見が、未だ明かされていない味シグナリングの、全容解明の基礎になると期待している。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_7_dissertation_number_26":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"甲20139"}]},"item_7_full_name_3":{"attribute_name":"著者別名","attribute_value_mlt":[{"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"9724","nameIdentifierScheme":"WEKO"}],"names":[{"name":"オオイケ, 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