{"created":"2021-03-01T06:20:56.648969+00:00","id":4280,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"d3484d4c-d880-4d24-a6e0-a99e1fa1b427"},"_deposit":{"id":"4280","owners":[],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"4280"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp:00004280","sets":["27:123:367","9:233:280"]},"item_7_biblio_info_7":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2006-03-23","bibliographicIssueDateType":"Issued"},"bibliographic_titles":[{}]}]},"item_7_date_granted_25":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2006-03-23"}]},"item_7_degree_grantor_23":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"University of Tokyo 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mm)を用いて水槽実験を実施した。まず、当地においては脱出後の孵化幼体が産卵浜から海へ向かって方位80°の針路をとる必要があるので、この方位へLEDを用いて条件付けした。これらの個体を視覚が全く効かない暗条件に置き、方位選択実験を行ったところ、あらかじめ条件付けされた方位付近に遊泳針路が集中することが明らかになった(平均選択方位 ± 95%信頼区間 115± 50°、r = 0.51、N=12、P < 0.05、Rayleigh test)。これによりLohmann(1991)の仮説が日本産アカウミガメでも確認された。次に野外において孵化幼体の分散過程を明らかにするため、電波発信機と発光体を曳航させた計14個体の孵化幼体を蒲生田から放流し、1?17時間追跡した。その結果、放流直後は全個体が東方向へ移動したが、うち11個体は次第に南東方向へ針路を変え、残りの3個体は東方向への針路を維持した。追跡と同時にGPSブイによる流況観測を実施した7個体中にも、針路を変更する個体と変更しない個体が見られたが、いずれの場合もブイと挙動が一致していた。これより、孵化幼体の移動は表層流と同じ方向に流された結果であると考えられた。特に産卵浜の南東にある蒲生田岬を抜けた後の南西方向への急速な移動(最大52.0 cm/s)は黒潮分枝流に乗ったためであることがGPSブイの軌跡からわかった。これらのことから、水槽実験で示された孵化脱出直後の地磁気による東向きの定位は、分散のごく初期の段階にのみ働き、その後外海に面した流れの強い海域では主に海流の影響を受けて分散していくものと考えられた。産卵浜内の集団分化日本産アカウミガメでは同一産卵浜で産卵する個体の中に、摂餌場として外洋域を利用する個体と沿岸域を利用する個体の存在が知られている。こうした生活史多型によって交尾時期・場所に違いが生じ、両者の間で遺伝子流動の抑制と分集団化が起こっている可能性が考えられる。そこで、既にこの生活史多型が報告されている屋久島(鹿児島県)と南部(和歌山県)に上陸・産卵する個体群について、分集団の存在の可能性を検討した。屋久島の産卵個体を、それぞれが産んだ卵の炭素と窒素の安定同位体比をもとに外洋グループと沿岸グループに分け、マイクロサテライト5領域(Cc7、Cc117、Cc141、Cm84、Ei8)を解析した。1999年に産卵した48個体(平均直甲長±標準偏差: 849 ± 44 mm, 範囲741-915 mm)のうちδ15Nとδ13Cがそれぞれ12‰と-18‰より低い値を示す8個体(平均826mm)を外洋グループに、これ以外の40個体(平均854mm)を沿岸グループに分類した。体サイズは外洋グループが若干小さかったが、両者に有意差はなかった(P > 0.05, Mann-Whitney test)。遺伝子解析の結果、両者のマイクロサテライトのどの領域についても遺伝子型出現頻度に差は認められなかった(P = 0.39-0.94、 G test)。またmtDNAの調節領域において認められた2つのハプロタイプの出現頻度に差はなく(Haplotype B:C = 7:1)、外洋と沿岸の両グループ間に遺伝的差異は認められなかった。さらに遺伝子型をもとにした分集団数推定(STRUCTURE2.0)でも、屋久島48個体内に明確な分集団の存在は認められなかった。南部についても、115個体(直甲長840±43mm, 755-952mm)のマイクロサテライト5領域を解析して分集団数推定をおこなったが、複数集団に分割できる可能性はほぼ0%と算出され、分集団は存在しないことが明らかになった。これにより地理的な集団構造を考える際に少なくとも各産卵浜を地域集団の最小単位として扱っても良いことが確認された。産卵浜間の集団構造日本におけるアカウミガメの総産卵回数の約半数近くが行われる南部、宮崎(宮崎県)、屋久島、吹上浜(鹿児島県)の4産卵浜に蒲生田を加えた計5産卵浜を対象に集団解析を行った。解析に先立ち、産卵個体数の少ない蒲生田においてもなるべく多くのサンプル数を確保するために、孵化幼体の血液あるいは産卵巣に残った死亡卵からDNAを抽出し、母親を判別する手法を開発した。2002年から2004年に蒲生田で産卵した7成熟雌に対応する7クラッチの産卵巣中の死亡卵47個と孵化幼体134個体(計181個体)からDNAを採取し、母親のマイクロサテライト3領域(Cc117、Cc141、Cm84)の遺伝子型推定を試みた。その結果、解析した7クラッチ21領域中の16領域で遺伝子型を推定でき、その全てが正しい母親の遺伝子型を含むことがわかった。これより本法は母親の判別に使用可能なことが明らかになった。そこでこの手法を用いて2002年から2004年に蒲生田で採取した母親不明の28クラッチ482個体の死亡卵・孵化幼体を解析したところ、未知の母親13個体を特定できた。このうちの10個体に対応する孵化幼体のmtDNA調節領域約640bpの塩基配列を決定した。同時に、上陸した産卵個体から直接肉片を採取できた10個体についても、同様にmtDNAの塩基配列を決定した。これらに南部(n=102)、宮崎(46)、屋久島(89)、吹上浜(22)の既知のデータ計259個体分を加えて新たに集団解析を行ったところ、5つの産卵浜全体で強い遺伝的分化が示された(Fst = 0.093、P < 0.001)。2つの産卵浜間の比較では、5産卵浜内の組み合わせ計10組中5組においてハプロタイプ頻度に有意差が認められた。有意差のある組み合わせのうち最も産卵浜間の距離が小さかった屋久島-宮崎間(P < 0.05)の距離約180kmは、千葉から八重山諸島まで約2000kmにもわたる本種の産卵場分布と比較して非常に小さく、遺伝子流動の著しい抑制が示唆された。このような抑制は、幼期にカリフォルニア沿岸まで渡洋回遊する日本産アカウミガメの大きな回遊・分散能力や、アユやマダイのように本種とほぼ同様な地理分布範囲をもつ他分類群の遺伝的均一性を考慮すると、ウミガメの分散能力の不足や物理的な障壁がその原因となっているのではなく、むしろ成熟雌が産卵回遊において示す母浜回帰性によるものと考えられた。同様に、雄による遺伝子流動の実態を明らかにするため、雄の遺伝的関与を反映する核DNAを解析した。南部(n=115)、蒲生田(10)、宮崎(46)、屋久島(91)、吹上浜(21)の5つの産卵浜から得た計283個体についてマイクロサテライト5領域を用いて集団解析した結果、5産卵浜全体の遺伝的分化(Fst = 0.002)はmtDNAによる解析値(Fst = 0.093)よりも大幅に低かったことから、雄が関与することで産卵浜間の遺伝子流動が促進されているものと考えられた。2003年に蒲生田で行われた父性解析の結果(酒井 2005)も、成熟雄が別の産卵浜で産卵した複数の雌と交尾することを示唆しており、本研究の結果を裏付ける。一旦産卵のために上陸した砂浜を変更することが困難な雌のウミガメにとって、繁殖成功の実績のある母浜へ回帰することは未知の産卵浜を使うリスクや好適な産卵浜探索のコストを軽減させる大きな利点がある。しかしその一方で、母浜回帰性は産卵浜間の遺伝的な交流を分断する欠点もある。雄による産卵浜間の遺伝子流動は遺伝的に脆弱な小集団に個体群が分断化されるのを抑制する機構として日本産アカウミガメの繁殖生態の進化過程で備わったものと考えられた。本研究の結果、アカウミガメの初期分散過程における地磁気定位能力と表層流の役割が初めて明らかになった。これは放流後の孵化幼体の生残や加入成功を考えるための重要な基礎知見となることが期待される。また、成体では遺伝子流動に性差があり、雄によって産卵浜間が遺伝的に連結されている証拠を日本産アカウミガメで初めて示すことができた。これらの知見は本種の個体群動態を考える上で重要なものであり、今後本種の保全対策の立案において新しい指針を提示するものと考えられる。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_7_dissertation_number_26":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"甲21280"}]},"item_7_full_name_3":{"attribute_name":"著者別名","attribute_value_mlt":[{"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"9762","nameIdentifierScheme":"WEKO"}],"names":[{"name":"ワタナベ, 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