{"created":"2021-03-01T06:20:57.143301+00:00","id":4288,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"181ec20d-ae95-494c-8752-15cf08ef3260"},"_deposit":{"id":"4288","owners":[],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"4288"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp:00004288","sets":["27:214:366","9:233:280"]},"item_7_biblio_info_7":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2006-03-23","bibliographicIssueDateType":"Issued"},"bibliographic_titles":[{}]}]},"item_7_date_granted_25":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2006-03-23"}]},"item_7_degree_grantor_23":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"University of Tokyo 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の合成が検出された(図1b)。一方、胚の細胞数や細胞周期がM期にある細胞の割合は増加しなかったことから、休眠胚はG1期で細胞周期を停止していることがわかった。胚の総転写活性は、休眠胚では交配後4日目の胚と比較して明確に低下していた(図1c)。活性化胚では、総転写活性は再び上昇し交配後4日目の胚以上のレベルに達した。これらのことから、E2の分泌が無い場合、着床期の胚は着床やその後の胚発生を行わずに細胞周期をG1期で停止して細胞増殖を抑え、総転写活性も低下した状態に移行すること、その一方でこの胚は、E2の刺激を受けた場合に急速に総転写活性を回復させ、細胞周期の進行を迅速に開始することが明らかとなった。そこで次に、胚の細胞増殖および遺伝子発現の制御機構に対するE2の作用を明らかにするために、この時の細胞周期の制御に関わる因子と、遺伝子発現の変化を制御するエピジェネティックな修飾とを明らかにすることを試みた。初期胚における細胞周期の制御機構は未だ解明されていない部分が多い。4細胞期以降の胚発生では、細胞はサイクリンD-pRb系を欠いており、ほぼM期とS期のみの繰り返しによる内在的にプログラム化された遺伝子発現と細胞増殖を繰り返す。これに対し着床期以降の胚では、細胞は外部環境とのコミュニケーションを開始し、胚の中の細胞同士あるいは胚と母体組織間でシグナルを交換しあい、互いの細胞増殖の速度や時期を調整し合いながら、より複雑な構造を形成していくと考えられる。しかし、このような一般の体細胞の持つ細胞増殖機構を胚がいつから獲得するのかは不明な点が多い。そこで本研究では、着床期の胚盤胞における細胞周期制御因子の発現の変化を明らかにすると共に、E2の刺激の有無がこれらの因子の発現に与える影響を調べた。休眠胚はG1期で細胞周期を停止していること、E2由来の刺激はMAP-サイクリンD系を経由して細胞増殖に関与する可能性が高いことから、G1期の進行を制御する因子の変化に着目した。その結果着床期の胚では、それ以前から発現されているサイクリンD3やサイクリンEの他に、サイクリンD1の発現の開始が観察された(図2a)。休眠胚ではサイクリンD及びサイクリンEの発現はいずれも低下しており、一方p21の発現の上昇が見られ、G1サイクリンの機能抑制状態にあることが明らかとなった(図2b-d)。これに対し活性化胚では、サイクリンDとサイクリンEはいずれも発現が急増し、p21の発現量は低下して、G1サイクリンの機能が活発な状態に移行していた。E2の有無によって生じる休眠胚と活性化胚では、総転写活性の変化に代表されるように、細胞周期制御因子だけでなく複数の遺伝子の発現が大きく変化していることが明らかとなっている。しかしこの様な遺伝子の発現を制御する主要なメカニズムである、エピジェネティックな修飾の変化は、着床期の胚においてはほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、エピジェネティックな修飾の中でも比較的研究が盛んに行われ、遺伝子発現への関与と機能の多様性が明らかになりつつある、ヒストンH3及びH4のアセチル化修飾とメチル化修飾、そしてヒストン変異体の置換に着目して、E2の作用に関連する修飾の探索を試みた。交配後4日目の胚および休眠胚と活性化胚でヒストン修飾を検出したところ、それぞれの修飾は胚の種類や部位によって様々な量で存在していることが明らかとなった。内部細胞塊(ICM)と栄養外胚葉(TE)では複数の修飾で修飾量が大きく異なる傾向があった。多くの修飾は活性化に伴う胚の総転写活性の変化に関わらず、明確な修飾量の変化を示さなかったが、H3K9のジメチル化修飾とH3.1の変異体であるH3.3への置換量は胚の休眠化や活性化に伴う転写活性の変化に相関した変化を示した。すなわち、H3K9のジメチル化修飾は休眠胚のICMで高い修飾レベルを示し、H3.3は交配後4日目の胚および活性化胚で核小体に強く検出された(図3)。休眠胚のICMで検出されたH3K9のジメチル化修飾の上昇は、この修飾が着床期胚の発生進行に関わる遺伝子の発現を抑制していることを示唆しており、ヒストンH3.3の核小体への局在は、このヒストンがrRNA合成を促進することで、活性化胚における翻訳効率を増加させていることを示唆している。卵巣から分泌されるE2は子宮から複数のシグナル因子の発現を誘導し、これらの因子は胚へ作用して胚の着床能獲得に寄与する。EGFやGM-CSFは子宮側から発現するシグナル因子で、胚側は受容体を発現してこのシグナル因子を受容し、遺伝子発現を変化させることが報告されている。また、卵巣から分泌されるE2は、子宮内膜において代謝型の4-OH-E2となり、これが胚に作用して胚の着床能獲得に関与することが報告されている。これらの外因性シグナル因子が存在しないin vitroの胚培養系では胚発生は胚盤胞の時期までしか進行できないことから、in vitro胚でも着床期以降の胚発生には母体側から分泌されるこれらの様なシグナル因子が必要となると考えられる。そこで次に、胚培養系においてもin vivoにおける胚の休眠化と活性化と同様の状態が再現されるか調べた。まず、胚培養系で外部から着床能獲得の指標として頻繁に用いられるout growth現象と、細胞周期制御因子の遺伝子発現の変化を胚の活性化の指標として用い、KSOM中で胚を培養し、増殖因子等を何も添加しない状態およびこれらの因子を添加した時の胚の活性化の有無を調べた。その結果、培養液中に何も添加しない場合、胚は胚盤胞までは正常に細胞分裂を繰り返し胚発生を進行したが、受精後4日目の透明体から脱出後はout growth現象を起こさず、胚発生をほとんど停止したままの状態を数日間維持した。また、受精後5日目にEGF、GM-CSF、E2、4-OH-E2を添加した場合は、単独で培養液に添加した場合も、EGFとE2や4-OH-E2を同時に添加した場合も、活性化の指標である胚のout growth現象や、サイクリンやG3PDH等の遺伝子発現に明確な変化は見いだせなかった。そこで、単一の因子のみでは胚の活性化を誘導できない可能性を考慮し、次に複数のシグナル因子を含有していると考えられるFBSを用いた。受精後5日目に培養液中にFBSを添加した場合には胚のout growth現象が観察された。また、FBS無添加下では、受精後5日目の胚に対し7日目の胚の遺伝子発現は、サイクリンDやサイクリンEの発現が低下し、休眠胚と類似した遺伝子発現の変化を示した。さらに受精後7日目の胚にFBSを投与すると、受精後8日目にはサイクリンDやサイクリンEの発現の上昇が確認され、また受精後10日目にはout growth現象が確認され、in vivoでの胚の活性化と類似した状態が再現できた。この様に培養胚においても、休眠胚と同様の機構により細胞増殖が停止し、外因性因子によって活性化胚と同様の機構で細胞増殖が開始されることが示された。その一方で、in vivoでは胚の活性化に伴って修飾量の変化が見られたH3K9ジメチル化修飾やH3.3の置換はin vitroでFBSにより活性化させた胚においては同様の修飾パターンは示されず、E2の作用のうち細胞周期制御因子の発現を上昇させる作用など、その一部のみを代償できる因子がFBSには含まれていたと考えられる。以上のことから、胚は着床期に遺伝子発現のメカニズムを大きく転換するが、E2由来の外因性シグナルはこの転換期以降の遺伝子発現の進行に不可欠であり、サイクリンD1やサイクリンE等のG1期サイクリンを介して細胞周期の進行に関わり、またエピジェネティックな修飾を変化させることが示された。活性化後の胚では、シグナル伝達や代謝に関わる遺伝子の発現が大きく上昇することが報告されており、胚はE2の刺激による遺伝子発現調節機構の転換により、着床期以降の急激な細胞増殖を可能とする新たな遺伝子発現パターンを生み出すものと考えられる。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_7_dissertation_number_26":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"甲21327"}]},"item_7_full_name_3":{"attribute_name":"著者別名","attribute_value_mlt":[{"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"9778","nameIdentifierScheme":"WEKO"}],"names":[{"name":"マツハシ, 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