{"created":"2021-03-01T06:20:57.760369+00:00","id":4298,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"80e14dea-fd6d-4927-aa24-89c078433b0f"},"_deposit":{"id":"4298","owners":[],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"4298"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp:00004298","sets":["27:78:288","9:233:280"]},"item_7_biblio_info_7":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2007-03-22","bibliographicIssueDateType":"Issued"},"bibliographic_titles":[{}]}]},"item_7_date_granted_25":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2007-03-22"}]},"item_7_degree_grantor_23":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"University of Tokyo 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甲虫目シデムシ科ヒラタシデムシ亜科にこれまでの観察事例から飛翔能力を持たない種が少なくないと予想される。一般にシデムシ科は,脊椎動物の死骸を食物とする腐肉食者であると認識されているが,脊椎動物の死骸は時空間的予測性の低い希少な資源であり,これを食物や産卵場所として利用するには,比較的高度な探索能力が必要とされる。そのため,飛翔能力を持たない種の成虫や幼虫は,脊椎動物の死骸を利用することは困難であると考えられる。既往研究の結果を考え合わせると,これらは土壌無脊椎動物を食物とする肉食者である可能性が高い。 本研究では,ヒラタシデムシ亜科における各種の飛翔能力,食性,繁殖形質を明らかにし,これらの対応関係を検討した上で,分子系統解析によりこれらの生態形質の祖先復元を行い,以下の仮説を検討する:ヒラタシデムシ亜科では,成虫,幼虫ともに脊椎動物の死骸を食物としていた腐肉食の祖先種から,土壌無脊椎動物を食物とする肉食の種が進化し,それに伴って飛翔能力の退化が生じ,雌の繁殖に対するエネルギーの投資配分が増加するとともに,1卵あたりエネルギー投資量と産卵数の関係を決める繁殖戦略が変化した。 2章では,78地点より採集されたヒラタシデムシ亜科21種の成虫について,解剖によって飛翔筋の有無を調べるとともに,安定同位体比を用いて食性を推定した。その結果,全個体とも飛翔筋を持たない種が5種確認された。また,オオヒラタシデムシは,飛翔筋を持つ個体と持たない個体が共に存在し,飛翔筋2型を示すことが明らかにされた。成虫の窒素安定同位体比を,モンシデムシ亜科の腐肉食種,オサムシ科の肉食種,土壌無脊椎動物のそれらと比較した結果,飛翔筋を持つ種の大半は,主に脊椎動物の死骸を食物とする腐肉食者であると推定されたのに対し,飛翔筋を持たない種及び飛翔筋2型の種は,主に土壌無脊椎動物を食物とする肉食者であると推定された。 3章では,75地点より採集されたヒラタシデムシ亜科15種の卵サイズ,産卵数を評価し,繁殖への総投資量,卵サイズと産卵数の関係,及び卵サイズについて,飛翔筋を持つ種と持たない種における相違を検討した。ここでは,産卵数は卵巣小管数により評価するとともに,卵サイズと産卵数の積を繁殖投資量として定義した。体長には,飛翔筋を持つ種と持たない種の間で相違は認められなかった。各種の繁殖投資量,1卵あたりへの繁殖投資配分,卵サイズについて,体長を共変量とした共分散分析を行った結果,体サイズを同一とした場合,飛翔筋を持たない種のほうが繁殖投資量は大である(1.3?1.4倍)とともに,大卵少産型の傾向を示し,卵体積は大きい(2.1倍)ことが明らかにされた。この結果から,ヒラタシデムシ亜科における卵サイズに対する正の選択圧は,腐肉を巡る競争が考えられる飛翔筋を持つ種よりも,探索型捕食者である飛翔筋を持たない種において大きいことが示唆された。飛翔形質の有無により,繁殖形質の種間変異のうち,体長では説明できない部分の多くを説明可能であった。オオヒラタシデムシでは,繁殖形質に飛翔筋2型間での違いは認められず,体サイズを考慮すると,いずれの繁殖形質も飛翔筋を持たない種に近いと考えられる値を示した。 2,3章の結果は,ヒラタシデムシ亜科において,腐肉食性の祖先型から肉食性への進化とそれに相関した飛翔能力の退化,これらに相関した雌の繁殖投資量の増加,及び大卵少産型への変化が生じたことを示唆している。これらの進化的変化が実際に生じ,2,3章で示されたパターンが相関進化によって生じたかを明らかにするには,各種の系統関係に基づいて各形質の祖先復元を行い,系統的影響を除去して種間比較を行う必要がある。 4章では,分子系統樹を構築してヒラタシデムシ亜科各種の系統関係を明らかにすることで,これらの検討を行った。祖先復元の結果,ヒラタシデムシ亜科において飛翔筋の退化は2回生じ,完全な消失と飛翔筋2型への進化が異なる系統で1回ずつ生じたと推定された。食性は,推定結果が不明瞭な分岐点が多かったものの,腐肉食性の祖先型から肉食性への進化が確認されるとともに,飛翔筋退化は食性変化に相関して生じたことが有意に支持された。さらに,飛翔筋2型を生じた系統では,食性変化後に飛翔筋が退化したことが高い信頼度で推定された。食性変化及び飛翔筋退化に伴った体サイズの進化的変化は認められなかった。祖先復元の結果,飛翔筋の退化前から退化の際にかけて,及び完全な退化後に,退化する方向への繁殖投資量の増加が認められたが,退化の際の増加のほうが大きかった。また,飛翔筋退化前及び退化の際に,1卵あたり繁殖投資配分が大卵少産型へ変化したと推定された。卵サイズは,飛翔筋の退化前から退化の際にかけて,及び完全な退化後に,退化する方向に大卵化したと推定された。独立比較法の結果,大卵少産型への変化は,飛翔筋退化前のみに生じていたと推定された。以上より,飛翔筋を持つ種と持たない種における繁殖形質の相違は,繁殖投資量及び卵サイズに関しては,飛翔筋退化前から退化後にかけての変化が重要な要因となって生じたが,1卵あたり繁殖投資配分に関しては,退化前の変化が重要な要因となったと判断された。飛翔筋退化前に生じた絶対的な大卵化と投資配分における大卵少産型への変化は,腐肉食から肉食への漸次的食性変化や,腐肉食の祖先種において食物を巡る競争が激しくなるような状況が生じたことによると推察される。腐肉食種において絶対的な大卵化が生じていたならば,それは幼虫が探索型捕食者へ進化する上で前適応として作用した可能性がある。 本研究の結果を要約すると以下のとおりである:(1)ヒラタシデムシ亜科には,飛翔筋を持たない成虫が5種で確認され,それらは土壌無脊椎動物を食物とする肉食者であると推定された。(2)ヒラタシデムシ亜科では,成虫,幼虫ともに脊椎動物の死骸を食物としていた腐肉食の祖先種から肉食の種が派生したこと,この食性変化に伴って飛翔能力が退化したことが強く支持された。(3)飛翔能力の退化した種における大きな繁殖投資量は,退化前から退化後にかけて生じた雌の繁殖に対するエネルギー投資配分の増加によって生じたと推定された。(4)飛翔能力の退化した種が示す大卵少産型の繁殖戦略は,飛翔筋退化前における大卵少産型への変化によって生じたと推定された。明瞭な食性の祖先復元結果は得られなかったため,食性変化と大卵少産型への変化の相関進化については検討できなかった。大卵少産型への変化は,腐肉食から肉食への漸次的な食性変化に加え,祖先種における腐肉をめぐる競争の激化によって生じた可能性がある。 本研究の結果は,飛翔能力の退化に関する従来の知見とは異なり,ハビタットの環境特性変化の有無に関わらず,種の食性の進化的変化により飛翔能力の退化が生じる可能性を示唆するものである。ヒラタシデムシ亜科における腐肉食から肉食への進化的変化には,様々なレベルの雑食の段階が存在すると推察される。食性変化と飛翔能力の退化の進化的関係を明らかにするには,この漸次的推移過程を推定する必要がある。しかしながら,本研究で用いた食性推定法では雑食性について十分に検討することは不可能であった。今後は,食性の進化的変化を伴うと考えられる分岐点に関わる種を,より多く含めて系統解析を行うとともに,安定同位体分析以外の方法を併用して食性推定を行う必要がある。 本研究では,飛翔能力の評価は飛翔筋の有無のみで行った。しかし,飛翔筋を持つ種間でも,飛翔筋への投資量や飛翔頻度など,他の飛翔形質には変異がある可能性がある。飛翔形質と繁殖形質の相関進化を明らかにするためには,これらの変異についても検討する必要がある。 従来シデムシ科は,森林生態系において腐肉食者であると考えられてきたが,本研究の結果は,一部の種は土壌無脊椎動物を摂食する捕食者として機能するものであることを示している。これらの種は土壌無脊椎動物群集において優占種となることが少なくなく,本研究の結果は,森林生態系の構造と機能におけるシデムシ科の役割について,再検討が必要であることを示唆するものである。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_7_dissertation_number_26":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"甲22416"}]},"item_7_full_name_3":{"attribute_name":"著者別名","attribute_value_mlt":[{"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"9798","nameIdentifierScheme":"WEKO"}],"names":[{"name":"イケダ, 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