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Les poupées, vectrices de l’idéologie raciale ou d’empathie ? : Les représentations de l’altérité dans la littérature pour filles du Second Empire
https://doi.org/10.15083/0002008148
https://doi.org/10.15083/0002008148bd4fdfdd-2292-42c7-b7c4-ed0cb122f7d9
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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resonances_14-01.pdf (1.2 MB)
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Item type | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1) | |||||||||
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公開日 | 2023-11-27 | |||||||||
タイトル | ||||||||||
タイトル | Les poupées, vectrices de l’idéologie raciale ou d’empathie ? : Les représentations de l’altérité dans la littérature pour filles du Second Empire | |||||||||
言語 | fr | |||||||||
言語 | ||||||||||
言語 | fra | |||||||||
資源タイプ | ||||||||||
資源 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||||||
タイプ | departmental bulletin paper | |||||||||
ID登録 | ||||||||||
ID登録 | 10.15083/0002008148 | |||||||||
ID登録タイプ | JaLC | |||||||||
その他のタイトル | ||||||||||
その他のタイトル | ⼈形、⼈種イデオロギーの伝播装置あるいは共感の媒体? : フランス第⼆帝政期の少⼥向け出版物における「他者」の表象 | |||||||||
言語 | ja | |||||||||
著者 |
⾕⼝, 奈々恵
× ⾕⼝, 奈々恵
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抄録 | ||||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||||
内容記述 | 本論⽂の⽬的は、フランス第⼆帝政期(1852-1870)の少⼥向け出版物における⾮⽩⼈の⼈形のモティーフが、当時の上層階級の少⼥たちの「他者」をめぐる認識やイメージの形成にいかなる影響を与え得たのかを検討することである。 ⼈形産業が⼤きく繁栄した19 世紀のなかでも、第⼆帝政期は、精巧な作りと洗練された⾐装を特徴とする⽩⼈の⼥性型⼈形が流⾏の頂点を極めた時期であった。華やかな都市⽂化を体現し、「パリ⼈形(poupée parisienne)」とも称されていたこれらの⼈形が、その主な所有者であった上層階級の少⼥たちに擬えられるとすれば、世紀初頭より徐々に社会にその姿を現し始めていた⾮⽩⼈の⼈形は、彼⼥たちにとっての「他者」として捉えられるだろう。 1848 年の奴隷制廃⽌、植⺠地政策の拡⼤、⼈種理論の発展などを背景として「他者」への関⼼が社会へ広く共有されつつあった当時において、⾮⽩⼈の⼈形に与えられた主たる役割は、その⼈形が表象する「他者」についての知識を少⼥たちに伝達するというものであった。第1章で考察したように、少⼥雑誌『ラ・プペ(La Poupée)』に掲載されたコラムには世界各国の⼈形の特徴が⽂章で紹介されるが、各⼈形の質や完成度への評価が下され、さらにそれが制作国・地域の⽂明レベルと結びつけて論じられている。同様に、ベストセラーとなったジュリー・グロー『⼈形の回想録(Mémoires d’une poupée)』(1839)において、パリ出⾝の⼈形ヴェルメイユは、植⺠地のグアドループに漂着し、そこで遭遇した「ポポト(popote)」と称される現地の⼈形を、怠惰で、無知で、役に⽴たない少⼥として侮蔑的に描写したうえで、この観察記録を回想録として出版することで、読者の少⼥たちを教育する使命を担うのだと主張する。これらの例からは、⼈形が、フランスを頂点として諸外国を下位におくヒエラルキー構造を明⽰し、⼈種イデオロギーの伝播や植⺠地⽂化の浸透の⼀端を担う装置として機能していたことが読み取れる。 しかしながら⼈形がフィクションのモティーフとしてのみならず玩具として実在するモノであることを踏まえれば、これらのイデオロギーの受け⼿とされる少⼥たちが、⼈形と実際にいかなる関係を取り結び得たかを考慮しなければならないだろう。第2 章で着⽬したのは、⼈形をテーマとする少⼥雑誌『ラ・プペ・モデル(La Poupée modèle)』における⼈形のモティーフ、ならびに⼈間の少⼥とモノとしての⼈形との関わりの表象である。本雑誌の主要キャラクターである少⼥の⼈形シフォネットが主⼈公となる物語作品には、少⼥たちの所有する⼈形として、⽩⼈の「パリ⼈形」と、シフォネットが⽣まれ育ったブラジルでの⿊⼈の⼥中コラとその息⼦ジジが⼿作りした「クレオール⼈形」ジジ=コラが登場する。両者は周囲から外⾒の美醜をめぐる価値判断を下される⼀⽅で、ジジ=コラがかつての⿊⼈の⼥中の親⼦との交流とブラジルでの記憶を体現し、シフォネットの深い愛情の対象となり、「他者」への共感を⽣む媒体として機能していることが⾒てとれる。 さらにヒロインであるシフォネット⾃⾝もまた、フランス⼈の両親のもとに⽣まれながら幼少期より複数の⽂化圏で⽣き、⾔語や振る舞いのレベルで混淆性を内包する⽩⼈の少⼥/⼈形であった。すなわち彼⼥はフランス社会で「他者」であるという点において、ジジ=コラと共通する性質を有している。そしてフランス上層階級の⽩⼈と想定される現実の読者の少⼥たちにとって、シフォネットは外⾒上、彼⼥たちと類似していながら同時に彼⼥たちの「他者」でもあった。これらの点を踏まえるなら、読者たちは、みずからと似ていながらも異なるシフォネットに同⼀化することで、シフォネットの「他者」としての経験、さらに彼⼥の愛情と共感の対象でもあるジジ=コラ、およびその⼈形が体現する「他者」の⼈々との交流を想像することができたといえるのではないか。⾮⽩⼈を表象する⼈形は、「他者」をめぐるイデオロギーを伝播する装置であるのみならず、愛情にもとづく固有の関係を「他者」と取り結び、かれらへの共感を促す可能性を提供する媒体となり得るのであった。 |
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言語 | ja | |||||||||
内容記述 | ||||||||||
内容記述タイプ | Other | |||||||||
内容記述 | 論文 | |||||||||
言語 | ja | |||||||||
書誌情報 |
Résonances : 東京大学大学院総合文化研究科フランス語系学生論文集 巻 13, p. 1-19, 発行日 2023-10 |
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ISSN | ||||||||||
収録物識別子タイプ | ISSN | |||||||||
収録物識別子 | 2435-8371 | |||||||||
書誌レコードID | ||||||||||
収録物識別子タイプ | NCID | |||||||||
収録物識別子 | AA11829210 | |||||||||
出版者 | ||||||||||
言語 | ja | |||||||||
出版者 | 東京大学教養学部フランス語・イタリア語部会「Résonances」編集委員会 | |||||||||
関係URI | ||||||||||
関連タイプ | isFormatOf | |||||||||
識別子タイプ | URI | |||||||||
関連識別子 | https://resonances.jp/14/les-poupees-vectrices-de-lideologie-raciale-ou-dempathie/ |