WEKO3
アイテム
インスリン様成長因子とビタミンCは低温における骨格筋細胞の分化を促進する
https://doi.org/10.15083/00004121
https://doi.org/10.15083/00004121e4e71f26-77df-415a-8c65-4e046f6e55f5
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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ShimaAi.pdf (3.1 MB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2012-11-12 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | インスリン様成長因子とビタミンCは低温における骨格筋細胞の分化を促進する | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
ID登録 | ||||||
ID登録 | 10.15083/00004121 | |||||
ID登録タイプ | JaLC | |||||
その他のタイトル | ||||||
その他のタイトル | Insulin-Like Growth Factor and Vitamin C Promote Myogenic Differentiation at Low Temperature | |||||
著者 |
島, 亜衣
× 島, 亜衣 |
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著者所属 | ||||||
値 | 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 | |||||
Abstract | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 常時37℃前後の深部体温を維持する恒温動物においても、体表面や四肢末端では体温が低下する。本研究では、このような低温環境が細胞の分化に与える影響について、骨格筋細胞を用いて調べた。骨格筋組織は全身に分布するため、生体内でも実際にさまざまな温度変化に曝されることが予想される。また、筋分化制御因子(muscle regulatory factor; MRF)などの転写因子レベルで分化制御機構が明らかになっているため、細胞分化の温度感受性に関する研究モデルとして適当であると考えた。マウス筋芽細胞株C2C12を38℃で増殖させた後、分化を誘導して30℃で培養すると、筋管形成が抑制された。30℃ではMRFのうちMyoDは発現していたが、myogeninの発現が転写段階で大幅に抑制されていた。30℃で培養すると、MRFの正の制御因子であるE2Aは38℃と同様に発現したが、38℃では分化に伴って減少するMRFの負の制御因子、分化抑制因子Id3の発現が高レベルで維持されていた。また、38℃では分化に伴って発現が増加する、骨格筋分化の制御に関与するマイクロRNA(miR-1, -133a, -181a, -206) が30℃ではほとんど発現しなかった。すなわち、30℃では骨格筋細胞の分化が著しく抑制されることが示された。そこで、30℃でもId3の発現が低下して筋分化が進行する条件を探索した。通常培養温度でmyogenin発現を促進させることが報告されているインスリン様成長因子(insulin-like growth factor; IGF)-IとビタミンCをそれぞれ100ng/mlと200μMで培養液に添加したところ、30℃でもId3の発現が低下し、myogeninが発現して38℃と同様に多核の筋管細胞が形成された。IGF-Iは30℃でのmyogenin発現に対して濃度依存的に作用した。ただし、分化初期のみではなく、長期的な添加を必要とした。なお、IGF-IIも30℃でのmyogenin発現と筋管形成を促進した。IGF-IとビタミンCの添加は骨格筋分化に関与するマイクロRNAの発現も増加させた。これらの結果は、30℃における筋分化抑制の原因がIGFとビタミンCによってレスキュー可能な特定段階の阻害であることを示唆する。IGF-IとビタミンCによる筋分化促進作用は30℃以下でも認められ、これらを同時に添加するとC2C12はマウス深部体温より約10℃低い28℃でも筋管細胞を形成し、25℃でもmyogeninを発現した。次に、IGF-I過剰発現マウス(以下IGF-I Tgマウス)の長趾伸筋を用いて単一筋線維培養を行ない、筋衛星細胞の分化に対する低温の影響を調べた。IGF-I Tgマウスと野生型マウスから単離した筋線維をビタミンCは加えずに38℃と30℃で培養すると、どちらの温度でもIGF-I Tgマウス筋衛星細胞のmyogenin発現は野生型マウスよりも促進された。ただし、30℃ではほとんどmyogeninを発現しなかったC2C12とは異なり、30℃で培養した野生型マウス筋衛星細胞は一定の割合でmyogeninを発現していた。これは、分化した筋細胞自身がIGFやビタミンCのように低温でもmyogenin発現を促進する因子を分泌したためではないかと考えた。そこで、38℃で分化させたC2C12の培養上清を用いて30℃でC2C12を培養したところ、myogeninの発現が促進されることを認めた。これらの結果から、生体内には、局所的に体温が低下しても筋分化が阻害されないように、温度低下に対する耐性を高めるメカニズムが存在することが示唆された。これらの30℃における筋分化抑制と、IGF-IとビタミンCによるレスキュー効果は、マウス骨格筋細胞だけではなくヒト骨格筋細胞でも同様に認められた。従って、哺乳類の筋細胞に共通した現象である可能性が高いと考えられる。最後に、低温での筋分化におけるミトコンドリアの役割について調べた。骨格筋細胞は分化に伴って酸化的リン酸化依存的なエネルギー産生に移行することが報告されており、多くの先行研究がミトコンドリアの機能阻害によって筋分化が抑制されることを示している。電子伝達系のシトクロムc酸化酵素(cytochrome c oxidase; COX)サブユニットIの発現を調べると、38℃では分化に伴って発現が増加したが、30℃では発現が低かった。また、蛍光試薬JC-1を用いてミトコンドリア膜電位を可視化したところ、30℃では膜電位の低い細胞が多かった。しかし、IGF-IとビタミンCを培養液に添加するとCOXサブユニットIの発現とミトコンドリアの膜電位が回復したことから、低温におけるこれらの筋分化促進作用がミトコンドリアの機能回復を介することが示唆された。本研究は、骨格筋細胞の分化に必須である筋分化制御因子の発現やミトコンドリアの機能に、温度が大きな影響を与えることを明らかにした。骨格筋細胞が温度を感知する機構や下流の情報伝達経路については未だ明らかになっていないが、IGFやビタミンCなどの生体因子が低温の影響をキャンセルすると示したことは、今後、温度という物理的シグナルがいかにして化学的シグナルに変換されるのかを知る上で、大きな手掛かりとなると考える。本研究が、これから発展するであろう「温度生物学」の端緒となることを期待したい。 | |||||
書誌情報 | 発行日 2011-03-24 | |||||
日本十進分類法 | ||||||
主題Scheme | NDC | |||||
主題 | 463 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(学術) | |||||
学位 | ||||||
値 | doctoral | |||||
学位分野 | ||||||
値 | Humanities and Social Sciences (学術) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | University of Tokyo (東京大学) | |||||
研究科・専攻 | ||||||
値 | Department of Multi-Disciplinary Sciences, Graduate School of Arts and Sciences (総合文化研究科広域科学専攻) | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2011-03-24 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第26635号 | |||||
学位記番号 | ||||||
値 | 博総合第1052号 |